昨日のレッスンでのこと。
モーツァルトのヴァリエーションの速い部分で
速い音型の弾き方というものを教えた。
レガートでもなくスタッカートでもない究極の業。厳密にはレガートに聴こえるノン・レガート。
これは脱力ができていないと不可能なタッチで
マルタ・アルゲリッチが多用している。
私は「2度打ちのタッチ」と呼ぶ。
生徒は弾きやすいと言いながら
みるみる上手く弾いていた。
がしかし、弾きやすいと喜びながらも
その演奏はヤバいと思った。
弾きやすい快感におぼれてしまったのである。
ようするに技巧的には見事なのだが
音楽的抑揚、表情が失われてしまった。
よくある上手いけれども音楽的と感じさせない演奏になってしまった。
音楽はスポーツではない。
確かに弾きやすさの快感は大切なことだが
一方落とし穴もある、紙一重と言えるだろう。