ピアノの音は美しい。
少なくとも私はそう感じる。
愛をもって、ある種の工夫を凝らして紡ぎだされた音は美しい。
それは音というより、響きという言葉が似つかわしい。
ピアノにはメーカーにより基本の路線が違う美しさがある。
ただ弾いただけでも美しい楽器はあるしそうでないものもある。
でも、いくら優秀に作られた美しい音の出る楽器を弾いても
それは物理的に美しいだけ。
それは何の意思もない空虚な美しさ。
表面的な美に過ぎない。
知性がない。
香がない。
色がない。
愛がない。
時には鍵盤は叩きつけられ楽器が悲鳴を上げている。
そこには美はない。
真の美しさを出すには演奏者がものをいう。
演奏者の経験と技術と研鑽の末
初めて美しい音の出る楽器から
その楽器の持っている本当の美しい響きが出る。
本当の美しい楽器の音というよりは響きを知ったものは
一生その虜になってしまうだろう。
ピアノというのはそういうものだ。
媚薬のようであり、厳しさもあり甘さも兼ね備えた
悪魔にも天使にもなれる魅力に満ちている。
そこには演奏者の愛がなければならない。
演奏者はそこに気が付きそれを求め
まるで絵画を描いてゆくのがごとく
作品を描いていくことだと思う。
それが「弾く」ということだ。