ロシアの子供の教材と主にモーツァルトの作品を使ってのレッスンを始めて1年近くになるが、生徒たちの演奏がみるみる変わってきた。
ディーナ・ヨッフェ先生やマキシム・モギレフスキー先生のように、1音1音がベルベットのような光沢のある密度の濃い、角のない丸い音でフィンガーレガートの基本ができてきた。
ヨッフェ先生がレッスンの時、私たちが若いころはこういう練習をたくさんしたものです。と仰りながら、ものすごくゆっくりとワンフレーズを深い響きのレガートで実践されていたことを思い出す。しっかりと支えられた手で鍵盤の底をえぐるようにして打鍵され、その練習をたくさんしてきたからこそ出る芳醇な響きの世界。
ロシア独特の響きが紡ぎだされていた。
鍵盤は最終的には深くも浅くも捉えられなければならないが、基本の練習は深い打鍵でやらねばならないと思うようになった。浅い打鍵だけでは音に密度が出ないということを実感できた。
今更ながら、そのような練習を習慣づけることの大切さを感じる。