先月、ピアニストの若い友人、イリヤ・ラシュコフスキーからメールが来た。

何でも演奏会で来日するとのこと。久しぶりに会おうとなった。そして短い時間だが一昨日我が家に招待した。

 

偶然宿舎であるホテルから我が家までは近く、徒歩で来たという。旅慣れている彼にとって外国の街を歩くのはたやすいのだろう。

2年ぶりの再会だろうか。お互い日々忙しいので定かではない。

 

夕飯に奮発して鰻重の出前を取って談笑は多岐に渡った。

だれだれの1回のリサイタルのギャラはいくらか?という下世話な話から、ネイガウス流派についてのまじめな話まで。

 

ネイガウス流派については、言葉でいうのは難しいと前置きしてから、まずは詩的な世界と言えるという言葉に凝縮されていた。クライネフに長年師事していた彼は他人がどう言おうとネイガウス流派のピアニストと言えるだろう。

 

面白いことにクライネフに師事する前は、ゴールデンヴァイザー流派の教師に師事していたと言う。ある意味私と同じ経路をたどっている。

 

比較するとわかるのだが、ネイガウス流派に比べてゴールデンヴァイザー流派はアカデミックな世界と言っていた。これには私も同感だ。

 

見解は分かれるが、ロシアには伝統的に4つの大きな流派が存在する。

 

しかし、その違いを言葉で説明するのは音楽という抽象的な要素もあり難しく、そのスタイルの違いを把握するのはなかなか理解しがたい。

 

お土産に持参してくれた最新のCDにはフランスのコルシカ島で録音したショパンの幻想ポロネーズ、ソナタ3番、シューマンの交響的練習曲が収録されていた。

 

それを聴きながら談笑していたのだが、彼は自分では気に入らないのか、その演奏に否定的であり、控えめな態度で私に再三意見を求めてきた。

 

正直、非常に良い演奏だと思った。詩情溢れるロマン派の世界を見事に捉えていると思った。

 

私は率直に感想を述べた。それに対して彼ははにかんだ様子で安心したようだった。

 

ピアニストという職業は旅がらすで、時に孤独や不安を感じないか?と尋ねてみたら、大丈夫だと言う。

 

繊細さと強靭な精神を持っていることを実感した。

 

 

 

 

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