ホロヴィッツの音楽の表情が豊かなのはなぜ?
あの香り!あのとろけるよう様な音の表現!アール・ヌーボーを思わせる曲線美!それは究極の詩的なロマンティシズム!
アカデミックなタイプの演奏をするピアニストや多くの日本人ピアニストの演奏からは残念ながら聴こえてこない、存在しないと言ってもいい表現。
違いは何だろう?
今、ある生徒が弾くリストのコンソレーションやオーベルマンの谷の演奏をレッスンしていて思った。
もっとロマンティックに!もっと香りを!もっと苦しみを!もっと悲しみを!と率直に思って考えてみた。
そして気が付いた。
音の放つ響きのスピードの加減にあるということを。
スピードが一定になってしまうとその表情は直線的で変化に乏しい。
そのスピードを変えること、響きの広がり方に無限の変化をつけることが重要だ。
その方法は指の鍵盤に触れる入り口を変化させることにある。
具体的には手首の旋回が鍵だ。
ロシアピアニズムならではの概念だ。
そして生徒の演奏は詩的に物語るようになった。