奏法を変えた今、私からしてみると以前の奏法は、まるで鍵盤にしがみついていたように感じる。それは自由のない、まるで牢獄に閉じ込められていたような感覚だ。なんと息苦しい世界だろう。なんと無機質な世界だろう。

 

特にロマン派以降の作品では豊かな響きを生み出すために、多分にレガート・ペダルを用いているので、基本的に手の位置は、以前より鍵盤から離れ、感覚的には空中に存在しているようだ。まるで自由に空を飛びまわる鳥のごとく。

 

音は点でとり、手のひらの下に空気の層、言い換えるならば、響きの層をつくることにより、豊かな響きの空間が出来上がる。

 

この段階は、多分、ロシアピアニズムの奏法を学び始めても上級者でなければ出来ないのかもしれないが、いったん、この感覚を知ると、何と自由自在に弾けるのか!とにかく面白くて仕方がない感覚になる。響きを自由に操ることができる。

 

方向も。

色も。

太さも。

スピードも。

そして香りまで・・・。

 

まるで自由に絵画を描いているような錯覚を覚える。

 

鍵盤にしがみついて弾いていた従来の奏法の時とは、次元の違う世界を思い浮かべることができるようになる。

 

想像とはこれだったのだ!

創造とはこれだったのだ!

 

本当のピアノ演奏における芸術的行為の真理を知ることとなる。

 

ロシア人ピアニストの世界観は根本から異なるということを感覚的に内側から感じられるようになったことは幸せとしか言いようがない。

 

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