私の生徒、伊藤優(愛知県立芸術大学卒)は、月に2,3回、名古屋から新幹線で通ってきます。この度、このブログに彼女なりの今までを振り返った気持ちを書いてくれ、寄稿してくれたので掲載させていただきます。


大野先生に師事してまもなく1年を迎えようとしています。

以前の私は、幼い頃に叩き込まれた"指でしっかり弾く"のが良い音だと思っていて、とにかくしっかり弾いて音を出すことが基本だと思い込んでいました。
また、本番で緊張して手が震えるという悩みを解決するために、「指だけでなく手にも力を入れて弾けば震えないハズ」と考え、練習からそのように弾いていました…(笑)さすがに弱い音や美しい部分ではダメかなと思いましたが、誰にも注意されなかったので"指や手に力を入れても、表現できる"と思い込み、これを続行していくこととなりました。

しかしある時、レッスンで「ここで音色を変えて」とか「もっとespressivo」と指摘されても、その方法がわからないと気づきました。色を変えてとは言われても、そのやり方は誰も教えてくれません。自分流に直して、それで良いと言われても、どこがどう良くなったのかさっぱりわかりませんでした。考えても、試しても分からないので"意識すれば自分ではわからないけどたぶん変わっている"というどうしようもない結論に行き着きました。

先生の判断に頼り、芸術性のかけらもない思い込みをしていたことをとても恥ずかしく思います。。

そんなことを繰り返して年月が過ぎ、大学4年の時に、同期の丸尾祐嗣くんの響きをたまたま大学のホールで聴く機会がありました。新しいホールのピアノを弾いてみようという軽い気持ちで行ったのですが、彼の響きを聴いて愕然としました。「なんだこれは……!!?」というのが正直な感想です。ホールの隅々まで響き渡るなんとも美しい響きに包まれ、今まで聴いたことのない響きに深く感動しました。以前にも彼の演奏を聴いたことがありましたが、この時には別人になっていたのです。

とにかく興味を持ち、質問を繰り返したところ「この響きの正体は倍音で、倍音によって色彩を生み出し音楽をつくる奏法がある」ということを教えてもらい、彼に導かれて私も大野先生のもとで勉強を始めることとなりました。


先生のレッスンを受け始め、倍音の世界へ突入しましたが、すぐに手応えを感じるほど易しいものではありません。
まず耳が悪い。幸いにも倍音が聴こえる耳を持っていたようなのですが、それ以上のものは聴き方が変わらないと聴こえません。はじめは、自分で弾いた響きなど全くわかりませんでした。
そして手や腕の使い方の基本のキができない!!ロシアピアニズムでは手の平側の支えで弾きますが、1年先生に丁寧にご指導いただいてやっとなんとなく分かってきたかな…というスローペースです。。そしてなんと言っても指の力が抜けません。指でしっかり弾くというのがかつての基本だったので、これは本当に時間が必要です。。

最近やっと少しずつ手応えを感じるものの、3歩進んで2歩退がる状態、時には全然違う方向へ行ってしまって泣きたくなる時もあります。。常に自分の耳を疑い、でも信じることが大事だと最近思うようになりました。

1年でこんなにちょっとの成長でも、大野先生の求める響きが本当に素晴らしく特別なものであると実感でき、私もそれを追い求めたいという強い思いがあってのめりこんでいます。先生の奏でるまさに黄金、圧倒的な響きにはいつも脱帽します。色彩が自在に変化し、1音1音にドラマがあるのです。こんな世界があるとは知りませんでした…。
また先生は常に生徒の良い部分を認め、何が足りないのかを見極め、一人の芸術家を育てようとしてくださいます。先生の、教師としての姿にも脱帽します…。

まだまだ知らないこと、できないことの方が多いですが、先生の教えに深く感謝し、常に上を目指して勉強に励みたいと思います。





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