ロシアピアニズムに限らず、どのピアニズムで弾く場合においても、楽譜を見たときに必要な感覚の1つに、他の楽器で弾く場合を想像してみることは大切に思います。中でも、弦楽器や弦楽四重奏を思い浮かべることが多く、特にベートーヴェンのソナタの全作品において、そのことが重要であると思います。



もちろんロマン派以降の作曲家で、純粋にピアノのために作られ、その背景にはピアノという楽器の性能を知り尽くし、それを重んじて作っている作曲家もいると思います。例えば、ショパン、リスト、ドビュッシー、スクリャービン、そしてラフマニノフです。



それ以外の作曲家の作品においては、確かにピアノのために作られたのですが、作曲家自身の頭の中には、他の楽器が連想されているといったことを感じます。



最近のレッスンにおいて、特にブラームスに、それを感じることが多くなりました。



ある作品を、例えばショパンと同じ感覚、もしくは似たような感覚でテンポ・ルバートをしてしまうと、聴き心地は良いのですが、何かが違うと感じたのです。



そこで、楽譜を見るときに、弦楽器の発想で読んでいくと、リタルダンドをする場所やテヌートなどなど、結果としてテンポ・ルバートの質や場所が変わってしまうのです。



そのように弾かれたブラームスは、同じ作品を弾いても、全く違った顔を持つことになります。それに加えて、そのように弾いた方が、はるかに弾き易くなります。



それに関わることなのですが、ロシアピアニズムならではの響き、音色の多彩さで弾かれるときには、その魅力たるものが一層増し、何とも味わい深いブラームスになるのです。ドイツ流の奏法では味わえない、なぜか?よりドイツ的と感じさせる、深い深い低音に支えられた、確固たる土台のしっかりしたブラームス像が出来上がると思います。



このことは、やはり、最近のレッスンで、J.S.バッハの作品でも当てはまりました。本来、バッハの作品というのは、どの楽器で演奏をしても違和感がないと言われています。ですから、ピアノで弾く場合にどの楽器を連想してもよいと思いますが、私個人としましては、弦楽器を連想することが多いようです。実際にチェリストのミッシャ・マイスキーを中心としたトリオでゴールトベルク変奏曲が演奏されているCDを持っていますが、素晴らしい演奏です。ブラームス同様、弦楽器をイメージすることにより、土台のしっかりした健全で、非常に繊細で深みのあるバッハが出来上がると思います。



ここで、余談ではありますが、皆さんが、よく誤解されていることの1つに、ロシアピアニズムの奏法は、ロシア作品のためにある奏法だと勘違いをされている方がいらっしゃいますが、ロシアピアニズムの奏法は、あえて打楽器的に作られた作品は置いておくとして、どの作品においても通用する奏法なのです。先に申しあげましたように、弦楽器のイメージから、弦楽器のできる表現に近い表現ができる、唯一の奏法だと私自身は確信しております。



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