30年ぶりに解禁したホロヴィッツの演奏ばかり、観たり聴いたりしている私ですが、いつもそうなのですが、私の中での流行のピアニストや作曲家という存在があり、寝ても覚めてもそればかりという凝り性なのです。
で、ピアニストに夢中になるときには、そのピアニストの音楽というより、そのピアニストならではの響きが、無意識のうちに私の中の感覚に存在し、ピアノに向かっていると、気が付いたら、そのピアニストの特有の響きを追っているのです。
今回は、ホロヴィッツが大きく存在していますから、彼の特有の響きを追ってしまっています。そして、ふと気が付いたときに、オクターヴや和音を弾く時の響きが、自分では気に入らなく、なんとかしてホロヴィッツのような響きは出ないだろうか?ということを無意識のうちに追い求め始めていました。
その結果、両手ともに、5の指の響きというものに執着し、気が付いたら以前のタッチとは違ってきたといった感じです。
今から振り返ってみますと、私の5の指の響きは、ある種の硬さがあったと思うのですが、ホロヴィッツの5の指の響きのように、より豊かに歌ってほしいという思いから、タッチを変えることを試みて、以前よりは柔らかく膨らむ豊かな倍音が出せるようになりました。
よくよく考えてみますと、ホロヴィッツの手は私の手よりもはるかに大きいはずですから、同じように使っても無理があると思ったのです。
その点に関して、私も含め、世界中を見渡して、ホロヴィッツのような豊かな歌う5の指のタッチというものが、ホロヴィッツの影響を受けているピアニストたちもできていないと感じますし、ホロヴィッツの影響は受けていても、それが原因でホロヴィッツには残念ながら届かないのではないか?と思うようになりました。
それでは、歌う5の指のタッチを実現するためにはどうしたら良いでしょう?
そのカギは、5の指の脱力にあると思うのです。
私たちの手のサイズ、例えばオクターヴから10度あたりまでのサイズの場合、その手でオクターヴを普通に弾くと、ある種の硬さが響きに残ってしまいます。思うに、私たちの手で5度や6度くらいを弾く時の感覚と、ホロヴィッツのオクターヴを弾く時の感覚が似ているのではないか?と思ったのです。
その感覚は、手の中の脱力の度合いの違いであり、私は思い切って5の指の力を抜いてしまい、鍵盤に立てずに、指を伸ばしてブラブラの状態にしました。しかし、それだけでは豊かな響きは出てきませんので、手のひらにある指の付け根の筋肉を動かして、1,2ミリほど手前に引き寄せるようにしたのです。
そうしたところ、5の指の響き、倍音が増え、たっぷりと膨らみました。
このことを、あるレッスンにおいて、曲はリストのメフィスト・ワルツだったのですが、生徒にそれを示唆して弾かせたところ、やはり、5の指の響きが豊かになりました。
ホロヴィッツは、今の私の中では、圧倒的な存在のピアニストです。
ホロヴィッツばかり聴いていると、他のピアニストは色あせてしまうと感じてしまうほどです。以前の章でも申し上げましたが、ホロヴィッツの演奏の魅力の1つは豊かな音色の変化であると思います。その中でも、5の指の響きが圧倒的に違い、よく歌うということを申し上げたいと思います。
クリックお願いします!
にほんブログ村