このことは、タチアナ・ニコラーエワ先生がおっしゃっておりましたが、ロシアの基礎の教育の特徴で、まずはじめに音の鳴らし方(入れ方)と音の離し方というのがあります。
一般的に、ドイツやフランスでは、日本も含めて、音の鳴らし方(入れ方)に意識を置いて指導されますが、残念ながら、音の離し方(消える瞬間)に対しての指導はないと思います。
このことは驚くべきことであり、大変重要なことなのです。身体的な使い方のみならず、音を聴くという意識にも大きな影響があるのです。
まず身体的には、手首から意識して指を鍵盤に弾くというより指を置くのです。その際、支えるべき筋肉で支えていないと、良い音、それは倍音豊かな響きにはなりません。この基本がないと猫が鍵盤を踏んでも出る音と同じなのです。
そして、置いている間は、鳴り続けている音を聴き続けるのです。この時、音が消える瞬間まで耳を使ってその音を聴くという感覚的なことが必要になります。
そして、音を離す時には、基本は指で持ち上げるのではなく、手首で持ち上げるのが基本なのです。もちろん速いパッセージなどは、指をあげますが、手首もごくわずかながら連動しています。これは手の中の状態、筋肉の連動なので、見た目にはわかりません。
これで、音を鳴らす→聴く→音を離す、という一連の動きを学ぶことになります。
そんなことは簡単!と思う方は大勢いらっしゃると思いますが、実は非常に難しいことなのです。
私のところにはいろいろな生徒がいます。中でもピアノを教育する立場の先生をしている方も多いのですが、その中のお1人りに、昨日、これをやって頂きましたが、なかなかできません。たかが1音を出して離すということなのにもかかわらず、手首を固定してしまうため、指を上げる長年のくせがあり、簡単そうなことですが、すぐにはできませんでした。
非常に集中され、やっとのことで1音が鳴らせたといった具合です。
私自身の過去を振り返っても、やはり同じ経験をしましたし、こんなに大変なことをやらなければならない、超一流のプロの技というものを痛感し途方に暮れたものです。ですから、やっとできたときの喜び!自分で納得の行く美しい音が1音でも出たときの喜びは忘れもしませんが、と同時に、すべての音をこの音にしなければならないとすれば・・・と先の長さに愕然としたのを憶えています。難しい曲、音の多い曲なんて、とてもじゃないけど弾けない!とにかくトロイメライでもいいから、すべての音を大切に美しい響きの音で弾きたいと切実に思ったものです。
さて、昨日のレッスンに戻りますが、その方には、ロシアの子供用、ピアノ導入用の教材の単旋律から始まり、バッハのインベンションなども含め、片手ずつ、いかに音を1音1音歌わせてレガートを作るか?ということに主眼を置いたレッスンとなりました。
これは基礎が身について、1音の出し方、離し方がわからなければ、曲など弾けないとも言えます。この1音の出し方、そして特に離し方を身体的にも、聴覚的にも理解することは大変重要であり、ドイツやフランス人ピアニストやドイツやフランス流派の日本の教育現場、日本人演奏家の演奏には、特に音の鳴っている瞬間を聴くことと、音の消える瞬間の身体的な意味での音の離し方を教育されていないので、よって演奏にその影響が大きく及んでしまっているのです。そのような演奏は、私の感覚からすると、音の鳴る瞬間だけを意識しており、その後はどうでもいいような演奏に聴こえてしまうような演奏に聴こえ、隅々まで神経が行きとどいているようには聴こえないのが残念です。
クリックお願いします!
にほんブログ村