ロシアピアニズムのピアニストの録音を聴くと、硬い音だという印象、感想をお持ちの方がよくいらっしゃいます。確かに、そう聴こえるのもわかるような気がします。でも、それは、生でそのピアニストの音を1度でも聴けば、印象は変わります。実際はとても柔らかく、ホールの空間に広がっていく響きであり、録音というものは残念ながら、その豊かな倍音を拾わないようです。ですから、倍音ではなく基音だけが強調されてしまい、硬い印象が残るのです。
例えば、私でさえも、エリソ・ヴィルサラーゼやタチアナ・ニコラーエワ先生の録音は硬い音に聴こえます。しかし、どちらも生の音を知っているので、実際の音とは違うということを知っています。
これはよくわからない、定かではありませんが、思うに、ロシアピアニズムの奏法で弾くと打鍵のスピードが速いので、基音自体も他の奏法の基音とは違う性質をもっているように思います。ですから、ロシアピアニズムでないピアニストの音の方が、録音では柔らかく聴こえるようです。
やはり、録音は録音に過ぎません。
私からしてみると、例えば、ヴァイオリンの音というのが、最も録音の影響を受けやすい音に聴こえます。生で聴くと素晴らしい美しい響きであるはずなのに、どんなに素晴らしいであろうヴァイオリニストの録音を聴いても、どれも安っぽい音に聴こえてしまいます。
そのようなことから、私は録音されている音そのものではなく、録音されている音を基に、それ以上に広がる倍音を想像しながら無意識のうちに聴いているようです。
慣れてくると、硬いと感じられる基音を聴いただけで、倍音が豊かなのか、そうではないのかがわかるようになりました。ということは、ある程度基音が硬く聴こえないと、物足りない感覚、例えて言うならば、伸びてしまったパンツのゴムのように、柔らかく聴こえる録音は物足りなくなってしまったのかもしれません。(笑)
耳の感覚というものは、基本的に変化するものであり、同じ録音を聴いても、その時により聴こえ方は違うものです。皆さんも、そのことを念頭において、録音を聴いてみることをお勧めします。
同じピアニストでも、空間を感じさせられるような条件で録音した演奏を聴くと、スタジオ録音で硬いと感じられた音が、実は柔らかく感じることができ、全然違うように聴こえてくるものです。
クリックお願いします!
にほんブログ村