作曲家は皆それぞれに天才だと思いますが、とりわけモーツァルトとショパンに共通して感じるのは、頭の回転の速さです。モーツァルトはすべての曲、ショパンは特にマズルカなどの小品にそれを感じます。
それは、和声の変化を軸に音楽の表情がめまぐるしく変化して行くのです。また、その特性として、長調にも拘らず、ほんの一瞬だけ垣間見せる、悲しみにも相当するようなわびしさを感じさせます。
演奏者が指は間に合っても、彼らの頭の回転の速さ、その一瞬のわびしさについて行くのは容易でありません。
ですから、本番はもちろん、練習の段階から必要なことがあると思います。
それは、指をさらうというより、感覚をさらうことが大切なのです。
感覚をさらうには、テンポを落として、良く耳を研ぎ澄まし、和声の変化について行く練習です。言い換えるならば、これは脳の状態を変化させる練習です。
これをしないと、実際のテンポで弾いたときに指は間に合っても、頭の中が追いついて行ってないアンバランスな演奏になってしまいます。これは、不思議なことに、聴いている側には無意識のうちにわかってしまうことで、何か物足りないような気分や居心地の悪い感覚を覚えるのです。
ロシアピアニズムの演奏ではありませんが、私は個人的に内田光子氏のモーツァルトを好んで聴きます。彼女の演奏は、私から見てドイツ・オーストリア系の奏法であり、音の基本の発声や音色の変化は置いておくとして、音の強弱や、微妙なタイミングを変化させることにより、モーツァルトの表情の変化を絶妙に描き出していると思います。
彼女のモーツァルトは、ある意味において理想の演奏とも呼べると思います。彼女が世の中にブレークしたのは私が日本の大学生の時でした。私は彼女のおかげもあって、モーツァルトの真の姿を理解する、感じることができるようになるきっかけになったと思います。
その後、私はロシアピアニズムと出会い、傾倒していきましたが、それでもなお、彼女のモーツァルトは私にとって不動の地位にいます。彼女ほど、繊細にモーツァルトの心のひだを感じ取り、実践しているピアニストは、なかなかいないと思います。
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