昨今では、特に日本のメーカーのピアノは著しい変化を遂げ、素晴らしい品質の楽器が作り出されていると思います。もちろん、調律の状態によっても、また所有者の弾き方によっても、その楽器の状態は変化しますので、そのメーカーだから良い楽器であるとは言えないのも事実です。
私が思うに、そのメーカーによって基本の色合いというものを感じますが、その持って生まれた性格や先に挙げた理由により、1台1台が違うと思います。
私がピアノという楽器に求めるのは、一言で申し上げるならば、表現の多彩さ、繊細さです。これはロシアピアニズムと出会い、響きが演奏上の最も大切なことの1つとなったからです。
それ以前の私、つまり一般的な奏法で弾いていた頃は、今から比べると響きというものに無頓着だったと思います。もちろん、その当時、自分自身では響きを聴いていると思っていたものですが、今の私から言わせれば、全然お話しにならないほど聴いていなかったと思いますし、独りよがりな、なんちゃって聴いています!状態だったと思います。(笑)
ですから、留学中の約6年間、レッスンにおいてスタインウェイをいつも弾いていたのですが、ロシアピアニズムに出会うまでの私にとっては、「豚に真珠」「猫に小判」状態だったと言えます。
現在、私は15年以上前からスタインウェイを自分で所有し、レッスンにおいて生徒たちに弾かせています。最初は211センチのBモデル、そして昨年夏からフルコンでレッスンをするようになりました。
そんな必要性を感じない方のほうが圧倒的に多いと思いますが、私自身にとっては必然的なことなのです。
ロシアピアニズムを教えるということは、響きというものが非常に重要で、そのためには非常に繊細で、かすかな違いのタッチでも音色が変化する楽器が必要なのです。もし、私が一般的な奏法の教師でしたら、スタインウェイの重要性も感じなかったでしょうし、借金を背負ってまで購入しなかったかもしれません。
ですから、レッスンにおいて、生徒たちにスタインウェイで弾かせ、色々なタッチを教える上で必要なのです。
もちろん、昔の私のように「豚に真珠」「猫に小判」状態の生徒では、弾かせる意味がありませんし、一般的な奏法でピアノを弾かれてしまうと、正直、音色の変化のつかない楽器、言い換えるならば、楽器そのもののコンディションが悪くなり、例えて言うならば病気の状態の楽器になってしまう危険性もあります。
現に、私が某音楽大学にてレッスン室にあるスタインウェイに触れた事があるのですが、その楽器は残念ながら既に死んでしまっている状態で、スタインウェイとは思えない音がしますし、全く音色の変化のない楽器になってしまっていました。それは入れ替わり立ち替わり、生徒たちが好き勝手に力任せに弾いた結果、そのような状態になってしまったと思います。
それはさておき、私の生徒たちには、もちろん好き勝手なタッチで私の楽器を弾くことは許しませんので、生徒のタッチが最初は悪くてもレッスンを重ねていくうちに、タッチがよくなり、幸い楽器が傷むことはありません。
よく、スタインウェイと国産の楽器を並べて、生徒には触れさせない教師が大勢いますし、確かに先にあげた理由により難しい点もありますが、私はそのリスクをおかしても生徒に触れさせています。私に言わせれば、そのような教師は、響きの観点からのレッスン、表現するということに具体的に重点を置いたレッスンをしているつもりなだけで、本当の意味でしていないから、意地悪く言えば出来ないから、自分はスタインウェイの前に座り、生徒には触らせないのです。
教師がスタインウェイで弾き、それを国産の違うメーカーの楽器で弾かせて、その生徒が理解できるはずがないと思いませんか?
高額なレッスン料を取るなら、それなりのレッスンをするべきですし、スタインウェイに触れさせないという現状、生徒に還元しないのが当たり前の現状に対して、私は違和感を感じます。
この現状は非常に残念なことだと思います。モスクワ音楽院のレッスン室にはスタインウェイのフルコンが2台並んでいるそうです。それは必然的なことだからです。
日本においての教育現場で、それが必然となる日が来るのを願っております。 クリックお願いします!
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