卒業試験のシーズンになりましたね。



卒業試験で思うことがあります。たいていの音楽大学や付属高校の卒業試験は公開の場で行われています。そして成績優秀者は春になると卒業演奏会が待っています。
今日も桐朋学園大学の卒業試験が調布のグリーンホールで公開で行われているはずです。



この卒業試験ですが、私だけではなく、一般の印象として、大学の卒業試験や卒業演奏会よりも付属高校の卒業試験や卒業演奏会の方がおもしろいと言われています。



なぜならば、高校生の方がひと言で申し上げて、うまいからです。



もちろん、大学生の方が大人なわけですから、音楽的に内容が深い人もいるでしょうし、一概には言えないのかもしれません。

しかし、技術的な観点から見た場合、高校生の方が圧倒的に弾けるのです。



これは、運動能力のピークが一般に10代後半に来ると医学的に立証されているからだと思います。



一般的な奏法の場合、指の伸筋(指を上にあげる筋肉)と屈筋(指を下げる筋肉)の両方を使い、腕の重みをあまり利用しないで、指の運動能力に頼って弾きます。



それに対して、ロシアピアニズムにおける奏法は、指の屈筋のみを使い、腕の重みを最大限に利用して弾きますので指の運動能力に頼りません。



この差は大きく、私は一般的な奏法のことを、「指びき」と呼んでいますが、この「指びき」では、まず第1に、打鍵のスピードが遅いのです。打鍵スピードが遅いということは、鍵盤から離れる、ハンマーが弦から離れるのも遅くなります。よってそれが響きに影響があり、美しい音は出ません。



第2に、「指びき」では、指の運動で音を鳴らし、重さのコントロールが出来ないため、響きの種類がありません。



第3に、「指びき」では、先に挙げましたように、運動能力に頼るため、10代の後半を過ぎると、単純に指が回らなくなってくる、弾けなくなってきます。



ですから、ここに挙げた主な原因により、大学生より高校生の方が弾けるのです。

これを回避するためには、奏法を変える以外、方法はありません。



そして、前の章でも申し上げましたが、ロシアピアニズムにおける奏法では、年をとるほど楽に弾けるようになりますし、子供のころから訓練を積んでいない、アマチュアの方でも弾けるようになってくるのです。



よく教師達がいう言葉に「昔は指が回ったから弾けんたんだけど」と言って、今は一切弾かないレッスンが一般的ではないでしょうか?



あのマルタ・アルゲリッチが70歳になっても、若い時より上手くなっているという事実、それに比べて、名だたる巨匠と呼ばれるピアニストでも、指びきがために、どんどん下手になっているという事実。



みなさんは、どちらを選びますか?

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