ピアノ教師を15年以上やっておりますが、この間、耳の使い方が変化してきていることを実感します。例えば同じCDの演奏を聴いても、5年前に聴こえなかった音が、今の耳には聴こえるようになってきたのです。



レッスンにおいても同様です。ここ最近、生徒たちの音の響き方、音の行方が、まるで目に見えるように感じ取れるようになったのです。

「今の音は直線的に飛んだ!」
「今の音は曲線を描きながら空中に伸びって行った!」などと。目に見えないはずの音が見えてきたのですから、このままいくと目に見えないすべてのものまで見えてきてしまうのか?将来は霊媒師?などと思ってみたり。(笑)



冗談はさておき、生徒に1音を弱音で弾かせ、音が消えるまで、じっと聴かせることをします。

理想の響きが出ているときは、音が減衰すると同時に、音がだんだん遠くへ去って行くように聴こえます。特に楽器の側面で離れて聴いている場合、その現象はまるで目に見えるかのごとく顕著です。



それに反して、理想の響きではない、音の伸びがない音を弾いてしまった場合、音は減衰する時にハンマーのあたりで消えてしまうのです。つまり、音の行方が全く違うのです。



この理想の響きを出すために、何度でも1音を出させてみて、耳を使って聴きながら、試行錯誤を繰り返すことをさせます。

私が年をとるにつれて、音はもっともっと聴こえるようになれたら、どんなにうれしいだろうかと思って楽しみにしています。耳という器官は、意図的に使うことを繰り返すうちに、だんだん聴こえてくるものなのです。



前の章でもお話ししましたが、まず、意図的に耳を開いた状態にし、準備が整ったところで音を聴き始めるのです。そして、色々な演奏、音を聴き比べすることは、聴き分ける上で分かりやすい方法の1つです。



例えば、私がこのブログで挙げているピアニストばかりを選ぶ、すなわち良い音だけを聴き続けてみるのも1つの方法ですし、意図的に音の伸びていないピアニスト、と音の伸びているピアニストを同じ曲でも違う曲でも、その音楽を聴くのではなく、音そのものを聴き比べるのが良い方法です。



それは、日本のポップスの歌を聴くときに、おもしろいことに、私は無意識のうちに歌詞は全く聴かず、音楽ばかりを聴いてしまうので、曲の内容を全く把握しないで楽しんで聴いていますが、一般的には歌詞そのものを皆さん聴く傾向があるようです。もしかすると、その感覚に近いのではないでしょうか。

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