
ワルシャワのワジェンキ公園
ショパンのエチュード 作品10、作品25
ショパンのエチュードの作曲された背景は、もともと2曲のピアノ協奏曲の練習のために、その中の典型的な音型を基にそれぞれが成り立っています。一般的な解釈と異なり、私独自の解釈を加えて述べるならば、この作品の芸術的な観点からみた場合、それは既に指のための練習曲という範囲をはるかに超えています。そして、技術的な観点から考えられるのは、それまでのチェルニーなどの練習曲集から感じられる古典的な奏法=指を独立させ、その動きを頼りに弾く奏法ではなく、手首の動きも加わった腕の重み=重力奏法の発想で音型が成立しています。
この曲集の本当の難しさは、作品10-12「革命」を除き、技術的負担が大きい右手ではなく、左手の何気ない音型です。一部の方々には意外に思えるかもしれませんが、断言します。
ショパンが本当に意図した作品の芸術的意義が、それにより実現できると思います。しかし、ここでは、それ以前の基本となる、技術的負担が大きい右手を中心に述べたいと思います。その際、指の支点をはじめ、この奏法における基本は私のホームページ大野眞嗣「ピアノの時空」http://www.onoshinji.jpで述べましたので、それを踏まえた上で実践してください。
作品10-1 ハ長調
ショパンにとってハ長調というのは、最も弾きづらい調性とされていました。なぜならば、指の長さはそれぞれ違いますので、黒鍵を使用する調性のほうが、自然な手の形のままの状態を保つことが出来るからです。この曲を一般的な奏法、指の動きに比重を置いて弾くには、よほど恵まれた手の持ち主でなければ、困難だと言えるでしょう。
まず、音型を見てもわかるように、手を開かなければなりません。一般的に音型に沿って開いた状態で摑んでいくイメージがあると思います。しかし、大きな手を持った方ならばそれも可能ですが、一般的には10度広げただけで、手のひら全体が力みやすくなると思います。ですから、無理やり10度をイメージするのではなく、自分の手のひらが無理なく広げられる程度で構わないのです。あるいは指先をつぼめたイメージを持ってもいいかもしれません。とにかく脱力した状態を作ることが大切です。
そして4つの音(C-G-C-E)を一つの固まりで弾いていくのですが、それぞれの音をしっかり鳴らすことをイメージしたり、実際にしっかり鳴らす練習は必要ありません。それよりもC-G-Cの3つの音は、次の4つ目の音Eに向かって、軽く触れるだけでいいのです。
その時に手首の動きが重要になります。手首は1の指付け根で支えながら、Eの音、つまり5の指に向かって上に向かって弧を描くように動きます。その一連の動きをさりげなくすばやく行うのです。その際、指を動かすというよりも手首で鍵盤に軽く置いていくという感覚で弾きます。それにより、響きも4つ目のE音が強調され、そのほかの3つの音がハーモニーを作り混ぜ合わせていくような響きの空間を作る、また意識することが重要です。その際、手首の角度は外側に少し回転させた状態(1の指が鍵盤の蓋に近づく)が良く、第30小節目、第32小節目の下行音型は逆に内側に少し回転させたほうが弾きやすいと思います。
それから、これは時間的な感覚、もしくは錯覚といってもいいのですが、第1小節目の上行型は、それぞれのE音に向かってすばやく弾いていき、第2小節目の最高音Eまでアッチェレランド気味に一気に弾ききります。その急いだ分だけ、第2小節目の下行音型は少しだけゆっくり弾いていくのです。これにより、インテンポで弾くよりも、自然で音楽的なタイミングで音楽が奏でられると思います。その際、そのハーモニーにより左手のオクターヴと右手の1音目のそれぞれの音の出すタイミングも違ってきます。
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