大野眞嗣 ロシアピアニズムをつぶやく-ディーナ・ヨッフェ氏と

私の友人であり、世界的ピアニスト、ディーナ・ヨッフェ氏とともに



私自身、留学時代、ドミトリー・バシキーロフやタチアナ・ニコラーエワ両氏との出会いから、大きな影響を受け、それ以来ロシアの4大流派の中の1つ「ゴールデンヴァイザー流派」のピアニズムに傾倒し、研究を続けてまいりました。ちなみに4大流派というのは、「イグムノフ流派」「ニコライエフ流派」「ゴールデンヴァイザー流派」そして「ネイガウス流派」というもので、いわば日本でいうところの相撲部屋とでも申し上げれば容易に想像が出来ると思います。
しかし、ここ数年来、世界中のピアニスト、国際コンクールで圧倒的に上位を占める「ネイガウス流派」の継承者であるディーナ・ヨッフェ氏と親交を深めていく中で、彼女自身から多くの影響を受けました。ディーナ・ヨッフェ氏とは、第10回ショパン国際ピアノ・コンクール第2位の実績を持ち、やはり「ネイガウス流派」直系のヴェラ・ゴルノスタエヴァ氏に師事、国際的に演奏活動を繰り広げ、同時に現在はアントン・ルービンシュタイン国際アカデミーの教授で教育活動も積極的にされております。現在、ディーナ・ヨッフェ氏は、私にとってかけがえのない友人でもあり、「ネイガウス流派」の指導法の恩師でもあります。彼女のおかげで、現在の私は、「ネイガウス流派」、「ネイガウススクール」のピアニズムを研究、教師として指導し、様々なことが理解できるようになりました。


「ネイガウス流派」は、あのスビャトスラフ・リヒテルやエミール・ギレリスを育てた、偉大なる教師、ゲンリッヒ・ネイガウスに端を発する素晴らしいピアニズムの継承者たちが多く存在します。各流派に共通する「ロシア流派」の特徴は美しい音色と合理的な奏法の合致した一流のピアニズムです。中でもとりわけ、ゲンリッヒ・ネイガウスは、美しく多彩な音色で本物のレガートでもってピアノをいかに歌わせるかということを追求したそうです。

はじめてディーナ・ヨッフェ氏が、我が家にマスタークラスのためいらっしゃったときの言葉を今でも忘れません。
「あなたはバシキーロフに学んだから、ゴールデンヴァイザー流派ね!?私はネイガウス流派だけれでも、それでも構わない?」
ヨッフェ氏に限らず、みな自身の流派というものにプライドを持っているものなのです。

それでは、我が国日本のピアノ界を見てみますと、我が国なりに流派が存在していると思います。それは、「ドイツ・オーストリア流派」と「フランス流派」です。その2つの流派で占められているといってもよいでしょう。そのおかげで、実は現在の世界のピアニズムのスタンダードともいえる「ロシア流派」が、いまだに広まっていまっていません。


このことは、我が国のピアノ界の現状のレヴェルを考えたときに、殆どの教育者たちに対して、意識の狭さを感じます。
これはゆゆしき状況にあり、世界を見渡し、広い視野で、確固として存在する伝統に目を向けるべきです。

その伝統が崩れず、大切に継承されているのがロシアのみと言っても過言ではありません。今現在、世界の主流となるピアニズムは、約100年前からロシアのピアニズムが中心になっていると思います。当時、多くの亡命ロシア人がアメリカに渡り、時を同じくして、スタインウェイという楽器が完成され、何千人も収容可能なホールで弾くことが一般的となり、その必要性もあって、楽器そのものの性能が上がり、その楽器を基に奏法も必要に応じて追及され確立されたのです。ただその礎となったのは、ロシアで確立されたピアニズムであり、それが大きくビジネスと結び付いたのがアメリカであり、ピアノの歴史上、黄金期を迎えました。

一方、確かに、ドイツ・オーストリア流派、フランス流派というものは存在していましたが、今は残念ながら見る影もなくなってしまったと、世界的な評論家ハロルド・ショーンバーグも言っています。ですから、多くの偉大な作曲家を輩出してきた西ヨーロッパの存在は否定しませんが、歴史的事実から、ことピアノ音楽に関しては、その後のロシア、そしてアメリカが中心となって開花されたのです。

以上のような見地から、日本のピアノ界に一石を投じるつもりで、ネイガウススクールのピアニズムを自分自身でも研究、極めて行きながら、教育という形で社会に貢献したいと日々思っております。



私が帰国し、早いもので20年近くの月日が経ち、そろそろある程度の考えがまとまってきたことを実感しています。このブログをご覧になる方にとって、このようなピアニズムに興味を持つきっかけとなり、日本においても、より研究が盛んになることを願っています。






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