不穏な影は唐突にやって来ました。



私の地元を訪れてから、1ヶ月後。

 

Aちゃんのメンタルが不安定になりました。


急に

「今は放っておいて」

と言ってきたり、


急に情緒不安定になったり


心療内科に通うほどでしたし、

メンタルの病気は

一朝一夕では治らない

良くなったと思ったらまた急に悪くなる


それは、私の知り合いの経験上わかっていたつもりでした。



Aちゃんの気持ちが晴れるまで、そっと待ち、

数日して返信が


「ごめん。元彼から嫌なLINEがきてね。」


と。


正直、


またかよ


と思いました。



こちらが、何度もAちゃんの気持ちに寄り添って、回復の手助けをしていたのに、


またお前か?


そもそも、別れた元カノと復縁をする気がないのに、ズルズルとLINEをして、何がしたいんだ?


手放したなら、

幸せを願うなら


突き放すのも優しさだろ?と。



会ったこともない男性に、忸怩たる思いを抱きつつ、


私は感情を押し殺し、Aちゃんに


「そっか」


としか返せませんでした。



それから数週間、


Aちゃんが病む→私が長時間話を聞いたり、他愛もない話をしたりしてAちゃんが落ち着く→元彼がちょっかいをかけて来て、またAちゃんが病む…


のサイクルが続きました。


これもまた、賽の河原です。



この時に私も見捨てていれば良かったと今になって思います。


だって、私の存在は一時的な痛み止めに過ぎず、痛みの根本は私の治療不可なところにある。

患者も、そこから離れようとしないのですから。


私が何をしても無意味、無価値だったのです。


そして、Aちゃんが私に言った言葉


「ごめんね。私が元気かそうじゃないかは元彼次第だから」


今の私なら、ここで完全に手を切っています。


彼女を病ませる原因が元彼なら

元気にさせる存在は私だと思っていたから。


でも、その言葉は、その役割すら否定するもの、もっと言えば、これまでの私の「献身」も全否定されるものだったから。


でも、完全にヒーローに酔っ払っていた

(いや、もはや泥酔していた)私は



「完全に元彼から切らないと彼女は幸せにならない」と思ってしまい。



「来月、そっち(彼女のいる東海の某県)に行くわ」


と提案してしまったのです。



彼女から即座に「YES」の返答が、


トントン拍子に話が進み、日時や集合場所、スケジュールなどが決まっていきました。


そして、彼女からの返信がピタリと止んだ。


3日後、「大丈夫?具合悪くない?」といても立ってもいられず、追いLINEをしても未読…。


待ちに徹して、1週間後


「待たせたね!」とケロッとした返事が。


「心配だったよ(笑)」と軽めの返事をすると、


「決算期だったから忙しくてね~」と。



正直安堵しました。


てっきり、心身に何かあったのかと。



そして、その数日後、東海の某県に私は向かったのです。


この時、私は


「元彼より幸せにする自信がある。だから自分と付き合おう」と言うつもりでした。


「じゃあ付き合おうか」の時みたいに

変な逃げ道は残さず、真剣に…。ね。




彼女ととある商業施設で待ち合わせをし、


お昼に名物や観光地を周り、それなりに楽しいひと時を過ごしていたのです。


雰囲気も温まってきたとき、

彼女から


「来週、九州に行くんだ!」


と唐突に切り出されました。




次に返ってくる答えなんて分かりきっていたのに、私は一縷の望みをかけて、聞いてみました。


「何をしに?」



返ってきた答えなんて、書くまでもないでしょう。








「元彼に会いに」


聞いてもいないのに、彼女は続けました。



「あれから何度も私からLINEをしたの。そしたら会ってくれるってなって、2週間くらいLINEをしているんだぁ。また「付き合って」って言いに行くから、恥くんも応援してね!」


----------------

2週間前…あぁ、AちゃんからLINEが止まったタイミングだ。

----------------


全て合点がいきました。


そして、次に出す言葉が出てこず、半ば強引に


「東京には来ないの?」


かつてAちゃんが、


一緒に住む

とか

恥くんの家に行きたい


なんて言っていたのを今更思い出し、


さらなる絶望で上書きされることなんて自明の理なのに、もはや冷静な判断なんて出来なかった私は聞いてしまったのです。



「九州行くのにお金かかるから、また今度ね」



そう無邪気に返されました。



ここでようやく、すうーーーっと冷たいものが

頭の中を通り過ぎて行きました。



彼女の中での私の役割に気づいてしまったのです。



いや、


気づかないふりをしていたのかもしれません。


彼女にかけた時間、労力、気持ち…

全てを否定するのが怖かったから。


これだけリソースをかけたのに、報われない物語の結末をみたくなかったから。


わかりません。

なにも。



今になって過去を俯瞰してみた時に、もっともらしい仮説は幾らでも出せますが、この時の「すうーーーっと」通り過ぎたものが何だったのか、未だに説明が出来ないのです。



ただ、このときを境に、全てが終わった気がしたのは確かです。



そのあとのことはよく覚えていません。


「親が迎えに来るから急いで」

と彼女に急かされて駅に行ったのは覚えています。


そのまま、なんの余韻もなく駅で別れ、


体力も気力も残っていなかった私は、予約していた夜行バスをキャンセルし、新幹線に乗り東京へ帰りました。



幸いフード付きの服を着ていたので、私の醜い泣き顔は他の乗客の目には映らなかったでしょう。



新幹線の中で、

彼女から


「今日は楽しかった~また遊ぼうね」

と無邪気なLINEが。



3時間後、東京の我が家に着いた私はそっと


「ごめん。もう関わるのはやめるね」


と彼女に送っていました。


「なんでそんな事言うの?」


彼女にとっては青天の霹靂だったでしょうか。


何も分かっていないからこそ、今まで私を振り回して来られたのでしょう。


事細かに感情を説明する心的余裕は私にはありませんでした。


そこまでの労力を割いてまで、彼女との関係性を維持したくなかったから、


一刻も早く、この無意味な輪廻に幕を下ろしたかったから。



「本当にごめんなさい。幸せになって。」



そう返して、LINEを閉じました。


既読になり、返事は来ず。


元彼に別れを告げられた後は、しつこいくらいにLINEで復縁を迫ったそうですが、


私に対しては、それ以降のアクションはありませんでした。


一刻も早く離れたいと思いつつ、


もしかしたら、元彼と同じくらいしつこく関係維持を求めて欲しかったのかもしれません。


ここで、吹っ切れたのです。



「そうか、その程度にしか思われていなかったのか」


とね。


賽の河原からようやく抜け出せたにせよ、


私の一人負けで終わった、この毒にも薬にもならない一連のお話。


お付き合いいただきありがとうございました。




でもね。

まだ、ちょっとした続きがあったのです。