ねこだまり日記。 -6ページ目

ねこだまり日記。

好きなものは好き、と。

母が原因不明の熱で寝込んで一週間。
起き上がれず食事を取ることも出来ず、家を支えていたのが実質母一人だった為、全体の機能がマヒしてしまったように家族全員が疲弊してしまった。

二週目、熱は若干下がったものの、高熱が続いた為なのか耳が聞こえなくなった。
全く聞こえないわけではないけど、怒鳴るような大声が必要で、必然的に口の動きが読めるように、ゆっくりとはっきりと喋る癖がつき、あとボディランゲージがやたら上達した。
先日世界の船窓から帰国した友人が、喋るのと同じ分量のジェスチャーを繰り出していたを思い出す。
こういう事かと実感する。

10日を過ぎると母も家族もこの状況にだいぶ馴染み、父が聞こえない母の前で、さも大事な事を伝えるかのように、どうでも良い事を口パクで話すという悪戯を始める。
懲りもせず何回もやる。
よっぽど気に入ったのか挨拶代わりにやる。

二週間過ぎる頃には、これこそ義務だというように口パクを始めようとする父に、母はその口が開く前に
「あなたのやろうとしてる事は全てわかっている!!」
と先制を効かす技を覚える。
悔しそうな父の顔が印象的だった。

状況はまだ厳しいけれど、バカな家族は前向きな家族だとわかって、私もバカで良かったと思う。
歯医者を通い切ってわかった事。
頑張れば自分の時間が出来る。
月に1日だって2日だって、やりたい事は出来るのだ。

そう思って考えた。

そうだ、脱毛しよう。

今更じゃない、今だからこそ。

早熟だった小学生の私。胸は膨らまないくせにワキ毛は誰よりも早く生えた。
辛かったプールの時間。心もとない男子につけられたあだ名はもちろん「おい、脇毛」。

人よりしっかりした毛根。鼻下だって例外ではない。
よく聞いた驚きの声、「え、女子もヒゲって生えるんだ?」。
生えるんだよ男子諸君。
処理をすればする程近づく保毛尾田保毛男。

大好きなあの人に嫌われたくなくて、デートの前夜にせっせと風呂で自分の股を覗いてはラインを整える。
「あんたいつまで風呂入ってるの!」怒声と共に母に開かれた扉。確認後「早めに出なさいよ」と静かに閉じられる扉。

そんな思い出を昇華しよう。

ワキ100円、
股1,000円、
髭35,000円。

髭のポテンシャルにびっくり。

でも楽しみ。
誰の為じゃない完全なる自己満足。
大人の逆襲なのだ。
長かった歯医者通いが終わった。

歯が痛むな、虫歯かなと会社終わりに歯医者に駆け込んだのが約一年前。

脇田さんこりゃ乳歯ですよ、乳歯が浮いてグラグラしてるんですよ、もう浮いちゃってるんで抜いちゃいましょうね、えい

と抜けとも言ってないのに抜かれた、30年間人知れず頑張ってた私の乳歯。

脇田さん、抜いた乳歯の下に永久歯いないからインプラントかブリッジしましょう、インプラントだと一本20万円、ブリッジだと全部で20万円、どっちがいいです?

二者択一に成りきれてない難しい二者択一を迫られた一年前。
あれから地道に地道に、1ヶ月に1回か2回だけど、なんとか仕事と折り合いをつけて地道に通い続けた一年間。

お疲れ様、よく頑張って通いましたね

と、あの時は乳歯詐欺の悪魔のように見えた先生も、最後には感謝でいっぱい、素直に有難うございましたと伝えられた。
身支度を整えて治療室を出る間際

ちなみに反対の同じ場所も乳歯だから、また抜けるかもね脇田さん

この一本だけは死ぬ気で守ろうと決意した瞬間。
乳歯詐欺の悪魔はいまだ私の20万を狙っている。