犬にも猫にも様々な品種があり、大きさや形態には幅があります

ある目的のために作り出されたり、たまたま産まれた特殊な形質を固定したり

その結果、特定の品種はある病気にかかりやすい。そんな状態になっているものが多々あります

時々テレビ番組で特集を組まれることもあるので知っている方も多いでしょう

今回はそんな品種と病気、「品種好発性疾患」の話

 

いきなり小難しい言葉を出しました。品種好発性疾患

これを書くにあたってとある本を参考にしているのですが、そこには「とある品種における疾患のリスクが高い状態」と定義されています

わかりやすく言えば結局は、かかりやすい病気(他の品種に比べて)、という一言に収まります

では、どうしてかかりやすいのか、という話になりますが、いくつかのパターンに分けられます

 

①遺伝性の疾病

②品種の目的に合致した疾病

③形態の発現に伴う生理的な疾病

 

あくまで私なりの分類です。それぞれ重複するケースもありますし、地域性や時代背景等、これらとは関係ない要因もあります

とっかかりとしては飲み込みやすいかと思います。興味を持った方はぜひご自身でも調べてみてください

 

順番にいきましょう。まず①遺伝性の疾病について

遺伝子上に特定の病気に関わる情報が固定されてしまっている状態です

品種とは言い換えれば特定の遺伝子、情報を固定させた一群です。当然のことながら目的外の遺伝子が同時に固定されることがあります

これが病気に関与する情報だったとき、遺伝性、家族性の病気として発現しやすくなります

あくまで発現しやすいだけで、確実ではありません。病気の遺伝子は基本的には弱いもので、条件が揃わなければなかなか発現しません

逆に言えば条件が揃ってしまえば間違いなく発症してしまうのですが……

こういった病気を避けるには、まずはそういった血筋を避けることです。血統を辿ることができれば理想的です

または遺伝子検査を行う。ただしこれは現実的ではありません。遺伝性が疑われてはいるものの目的の遺伝子が判明していないものも多いですし、そもそも検査系ができてないケースが大多数です

あとは繁殖の場での話ですが、病気の素因を持っている子を繁殖に使わないことです。全体から病気の遺伝子を減らしていければリスクは減らせる、当然ながらもっとも大切なことです

 

②品種の目的に合致した疾病について

これについては病気よりも怪我がわかりやすいかと思います

例えばスポーツについて回る怪我、野球肘やテニス肘なんかがありますが、別にスポーツ選手の遺伝子に刻まれてるわけではありません

同じようにある目的のために作られた品種は、その目的によって発生する疾病は当然多くなります

例えば犬レースに頻繁に出るような犬は四肢への負荷が大きく骨折が多いというデータがありますし、猟犬ならば外傷やそれに伴う感染症は多いでしょう

逆に言えばレース犬、猟犬として作出された犬でもそういった活動をしなければ怪我をすることはないわけで、今回のテーマとは少しずれているかもしれませんね

ただし、ある目的のために特化した形態の場合は、そもそもその形態が疾病につながりやすいことがあります

 

それはつまり、③形態の発現に伴う生理的な疾病と同義にとらえることもできます

例えば猟犬の中でもアナグマ猟に特化して作出されたダックスフント。実際に猟に使われていたころは、巣穴に潜ったところで主に出くわし、鼻の頭を攻撃された、なんてこともあったそうですがこれは②のケースです

それに対して、短足種はそもそもが軟骨異栄養症というある種異常な生理状態にあります。軟骨の骨化が速く進み、その結果足の伸張が少なく足が短くなります。この影響は他の軟骨にも生じ椎間板ヘルニアとして現れますが、これが③のケースにあたります

 

同様に特徴的な形態を持つものはこういった傾向があります

短頭種でもやはりあの形態の本質はある種の奇形であり、短頭種上部気道症候群と呼ばれる疾患群を発症します。瞬きでまぶたを閉じきれないことによる眼の疾患も少なくはありません

また皮膚の余裕が多くしわが多い品種では皮膚病を生じやすくあります

猫は犬に比べれば品種作出は少ないですが、そもそも腎不全が多いのは純肉食で飲水量が少ないという生理的特長に基づくものですし、スコティッシュフォールド折れ曲がった耳は軟骨異常によるもので、症状の有無によらず全固体が進行性の関節症を持っているという報告もあります

あるいは漠然とした話で、小型犬はその体型の分骨格や筋肉が弱く膝蓋骨脱臼が比較的多くありますし、大型犬・超大型犬が若齢で骨肉種を発症することがあるのは、その体重で成長軟骨に過剰な刺激を与えるためといわれています

 

 

とは言うものの、致命的な病気でない限りは問題なく生涯を送ることができるケースも多く、そもそも大多数の病気については「リスクが高い」だけで確実に発症するわけではありません

逆にリスクが低くとも突然難病にかかってしまうことだってあります

根本的なところは病気にならないようにするということ。品種好発疾患と言えども、生活習慣で予防できる部分はありますし、予防できないものでも徴候を察知し、早い段階で対処する

つまりは一般的な健康管理の話に落ち着きます

そのアンテナの感度を少しだけ上げていきましょう。まずは調べるところから

ちなみに雑種の場合は、いいところを貰ってきてるだけならばいいんですが、両親の悪いところを両方貰ってしまっているパターンもありますので、両方調べておきましょう

 

 

今回は特定の品種を持ち出して病気の話をしましたが、どの品種が良い悪いという話ではないとはご理解ください

ペットを飼うということは家族が増えるということ。そこには直感や相性があるはずです

その直感を現実だけ見て抑えこむのももったいないと思います。注意事項があるのなら、その子のためにできることがあると前向きに捉えてみましょう

 

これから動物を飼おうという方には良縁を、すでに買っている方にはより良い関係をお祈りしています

 

獣医師 竹藤でした