2016年もはや7月、諏訪の短い夏も本気を出しつつあります
今回はそんな時候の挨拶とは関係なく、野良猫のお話

今年はダニ同様、なぜか野良の子猫を保護したという方が多く訪れます
個人的には冬があまり寒くなかった影響かなとも思っているのですが、原因の話はおいときまして
元気に保護されて元気な子、ぐったりして保護されて無事回復した子、また保護された方の献身的なお世話の甲斐無く残念な結果になってしまった子もいます
いち獣医師、またいち動物好きとして悲しい話はできれば聞きたくないものです



そんな昨今「地域猫」というふれあい方を耳にするようになっています
簡単に言うと「野良猫を増えないよう、かつ苦しまないよう地域で飼っていこう」というもの
これはあくまで個人的な解釈で要約しているので実際の定義とは異なるかと思いますが……

野良猫の問題がどこにあるか?
○公共の場所や個人の庭に侵入し、用をたす
○善意から餌付けをする人が現れ、その結果集まってくる。集まれば繁殖の機会が増えてさらに数が増える
○過剰な餌付けのために一帯が汚れる
○単純に猫が苦手な人には非常に居心地が悪くなる
大雑把にこんなところでしょう
地域猫とはこれらの問題を解決し、猫と共存していこうという試みのようです

何を行うか
●去勢、不妊手術を行う
 単純に増えないようにします。過剰な数にならないことで環境をコントロールする目的です
 あるいは、子供が生まれなければ、親世代が寿命を迎えれば野良猫の問題はなくなるはず、ということでもあるのでしょう
 盛りが付いた猫の鳴き声や、外飼い猫の望まない妊娠も避けられます
●一定の場所で決まった人が餌付けする
 集まる場所を制限することで、猫が苦手な人、アレルギーの人らが回避しやすくなります
 また餌が広がる範囲や量も制限できるので、一帯の清潔性を保ちやすくなります

良いことずくめのようです。しかしながらおそらくこれは猫好き動物好きの理屈
私はひねくれているので、ここであえて猫嫌いの人の気持ちになってみます
◎結局庭を勝手に出入りし、汚していくことに変わりはない
◎そもそも餌付けをしなければ汚れることもないし、もっと早く減る
◎(極論ですが)そこに猫がいることが問題だ

書いていて空恐ろしくなりましたが、中にはいるんじゃないでしょうかこういう人
知人の身内の方が大層な猫嫌いで、庭に罠を仕掛け、実際に身動きが取れなくなっているのを見たという話も聞いています

また公衆衛生上の問題として、野良猫の存在自体に
◎幼児、小児への猫回虫の偶発的感染(砂場がトイレになってしまっているケース)
◎野良猫内での猫エイズや猫白血病、パルボウイルス等の感染症の蔓延(家出したときに感染)
◎狂犬病等の人獣共通感染症が広まった際の暴露リスク
といったことも挙げられます

全て駆除してしまおうなんて口が裂けても言えません
地域猫のあり方が間違いだとも言いません
ただ、さらに一歩踏み込んだ共存策も考え始めてもいいのかな、と
地域猫の話を聞くたびにそんなことを考えています



やっぱり最善は野良猫がいなくなることですけどね。もちろん駆除という意味でなく
先日県内の保健所の、昨年の保護率や譲渡率、殺処分数等が報告、公開されましたが、譲渡率は順調に増加し、処分数は減っているようでした
しかし保護、捕獲された猫の大部分は野良猫であり、結局野良猫が問題という形
逆説的には飼い猫については捨て猫や無計画な繁殖はちゃんと減っているのだなと、安心できる結果でした
だから、きっとあと一息なんです
犬はリードや室内飼いといった不自由と引き換えに、安全と共存を手に入れました
猫も完全室内飼いが当たり前になるのがいいのかもしれません
実家の子たちは野良の保護猫でしたが、すっかり室内で満足している様子です



余談ですが、ドイツでは猫は室内飼いが当たり前で、かつ処分数ゼロを達成しているそうです
実はこれには裏があり、ドイツでは屋外にいる猫は狩猟対象となり、ハンターが手を下しているとかなんとか
そして調べたところ、実は日本でも猫は狩猟対象になっています
「ノネコ」と限定され、野良猫との区別こそ曖昧ですが、人間の生存圏に依存しない野生動物と定義されています。同様に「ノイヌ」もあります
まあ、無いとは思いますがね……



地域猫への批判的な話が中心になってしまいましたが、そんなつもりはありません
むしろ健全な猫ライフを送るための素敵な活動だと思います
繰り返しますがもう一歩、猫好きと猫の距離、そして猫嫌いとの距離感を大事にしていきましょう


猫は若干目つきの悪い野良猫が好き、矛盾している獣医師 竹藤でした