<本編の構成>

 

 斜線はその場の光景や他の人の行動など

 (W)はウェイ・インで、行動、「セリフ」(心の思い)

 (R)  はラン・ジャンで、行動、「セリフ」(心の思い)

 【作者の感想】

 

第43話 重なりあう心

 

天子笑(酒)を持ち帰ったラン・ジャン、雲深不知処の夜が更ける。シーチェンから「罰」のこととラン・ジャンの母の話を聞いたウェイ・イン。部屋に戻ると天子笑の準備をするラン・ジャンがいる。

 

 (W) 「ラン・ジャン・・・」

    (お前が俺のことをどれだけ思ってくれていたか、気付かなかった俺は馬鹿

     だな)

 (R)    「何だ?」

    (お前の好きな酒だ。ついでやる。ここに来て飲め)

 (W) 「ありが・・・ まったく言葉にするのはこそばゆい・・・。あの、つまり

     なお前の兄上の受けた打撃はかなり大きい」

    (お前の気持ちが本当に嬉しい。ラン・ジャン、生き返って良かっ 

     た・・・)

 

2人はシーチェンのことを話しあう。ラン・ジャンは窮詭道で笛の音が二つ聞こえたとウェン・ニンが言っていたと告げる。その後ウェイ・インは1人雪の降る濡れ縁に立っているとラン・ジャンが部屋から出てウェイ・インの横に来る。

 

 (W)「目覚めてから昔を思い返すたびに強く感じた。俺の聞いた笛の音は幻聴じゃ

    ない。そして今日のことで確信に変わった。窮詭道でも不夜天でも誰かが陰 

    から乱魄抄を使い陳情令の指令を変えた」

   (ウェン・ニンを狂わせたのは俺ではなかった。しかし、ウェン・ニンがジ

    ン・ズーシュエンを殺したという事実は変わらない)

    (R)「ジン・グアンヤオだ」

    (彼がすべての黒幕だ)

 (W) 「そうかもしれないし、違うかもしれない」

    (自分を陥れたものがいるのは確かだが・・・)

 (w)「目覚めた時は確かに答えを知りたかった。でも今言えることはどうでもい

    い、好きにしてくれ・・・ははは、これは俺の本心だ。答を知るも知らぬも

    俺にとって重要じゃない。世間の人にとって夷陵老祖は悪事を働いたことは

    確かだ。今さら俺が濡れ衣だと訴えても誰も信じないさ。結局人はただの口

    実を求めているに過ぎない。もしくは標的だ。罵倒できる標的、俺がいれば

    にっくき敵を共有し自分を誇れるんだ。だから、俺も覚ったよ。ジン・

    グアンヤオがいなくてもあの笛の音がなくても、別の偶然が起きた・・・あ

    あ、この世は無常、まさに無常だ。」

    (俺にはどうしようもない運命の仕業だ。運命に翻弄され生きて死ぬ。

    だけど人の愛は存在する。お前がくれる愛だよ)

 

ラン・ジャンは琴を弾き、ウェイ・インは酒瓶を持って障子にもたれ、ラン・ジャンを見る

 

 (W)「思えばあの時は本当に孤独だった。俺を信じてくれた人はみな死んだ。ウェ

    ン・ニン、姉さん・・・幸い」 

   (ここにお前がいる)

 (R)「この世にはお前を信じる者がいる」

   (私がここにいるじゃないか)

 (W) 酒瓶を手に

   「ラン・ジャン。お前にささげる。人生で1人の知己がいれば満足だ」

   (俺を求めてくれるお前がいれば、この世の人生が生きるに値するものだと思

    えるよ)

    (R)「心に恥じなければいい」

   (お前は間違っていない。私と共に生きよ!)

 (w)「誰に誹謗されようと、心に恥じなければいい・・・ラン・ジャン、ごめん

    な。ありがとう。」

   (今の世をお前と共に生きていきたい。俺の心からの願いだ。お前の愛はしっ

    かりと受け取ったぞ)

 

見かわす瞳、しんしんと降り積もる雪の中雲深不知処の夜は静かに更けていく。

 

【ウェイ・インはラン・ジャンの深い愛に包まれる幸せをいっぱいに感じ、その気持ちを受け取ったラン・ジャンの満ち足りた姿。心を重ねあわせた2人にふるふると真っ白な雪が降る。ラン・ジャンがいなくなった母の姿を求めて待ちわびた日も雪だった。ウェイ・インを「邪道」と決めつけるラン先生に抗して、「邪道ではない」と言うウェイ・インを信じようと決めた日も雪だった。真っ白な雪の清らかさはラン・ジャンの心そのものだ。】