今朝方、夢を見た。

あの人が帰ってくる夢だった。


私がワインバーで飲んでいると、
カメラマン仲間数人と店に入ってくるのが見える。

「どこに行ってたのー⁉︎」

「あの後、二人で海岸沿いを歩いてさ…」

そんな会話をして、

私は多勢の待つ場所へその人を連れて行った。

大歓声が沸き上がった。

…という、夢だ。


彼は、2008年7月、突如行方不明となった。

取材へ向かう、ヘリコプター事故だった。

その後、私は、事故の報道に対して、強い憤りと怒りを感じ、
自らの仕事への考え方を猛省し、悩んだのだった。


夢から覚めた後、

何故だろう、

悲しいとか切ないとか、そんな気持ちはなかった。

清々しく、活力が湧いた。

まだ受け止められていないからかもしれないし、
信じていないからかもしれないし、
微かな希望が未だにあるからかもしれない。
海賊にでもなっているのではないかと。
何より、事故後初めて夢で会えて、
心底、嬉しかった。

ある脚本家は、台詞に「いなくなる、ってことは、いないってことがずっと続くことだ」と綴った。
大ヒットアニメ映画を送り出した監督は「アニメーションは記憶を映し出すメディア。忘れる事を忘れない努力」と言った。

忘れない。

私たち夫婦は、暗黙の了解で、
彼の名前の一文字を、初めての子どもに頂いたのだから。