前からそうだが最近は特にジャマイカの話を口にしてしまう。皆もいい加減ウザそうな顔をしている。友達や先輩はまだ良いが、若い後輩達は先輩の話を聞かされ面白くない顔は出来ない。だからせめて真剣に聞いてます、という顔をするしかない。が、それもそろそろ限界か。そりゃ毎回「あ~ジャマイカ行きてえ~ジャマイカ行きてえ~」なんて念仏のように唱えられていればどんなに能面のように無表情を気取っていても苛立ちは沸々と思春期の少年のニキビの如く顔に炙り出されてしまうだろう。彼らの気持ちは良くわかるが勝手に口から発してしまうのも事実。困った困った。まだ帰国して半年だがもう体が疼いているようだ。

確かにもう何年も前から毎年この時期になると必ずジャマイカに行く準備をしている気がする。もう何回行ったかわかりゃしないほどパスポートはスタンプだらけだし、旅行会社の人も「神田様、今回も同じ経由ですか?」などと、行きつけの蕎麦屋のおばちゃんが「いつものね~」とお冷やを出す前に言ってくるような無駄の無い対応をしてくれる。まだ行き先も言ってないのにトランジット、つまり乗り継ぎの話をしてくる旅行会社。蕎麦屋のおばちゃんにいたってはいつもの「盛り」に勝手にオニギリまでつけてくる。実際毎度オニギリを注文しているのだから仕方がないにしろ、旅行会社同様、「そこはちゃんと尋ねてよ」ってところを省略してくる。

そう考えると何度も同じ事を繰り返した時、全てにおいて一番大切な箇所は一番省いても良い箇所になるのかも知れない。そしてソコを省く事によって聞き手はその省いた箇所が聞きたくなる。わかっちゃいるけどあえて言ってほしくなるのではないか。


という訳で俺はこれからは「行きてえ~行きてえ~」とだけ唱える事にする。皆はきっと物欲しそうな表情で「どこへ?」と言ってくるに違いない。