インドネシアのルフィーの旗
『【ジャカルタAFP=時事】
インドネシアは独立記念日の8月17日を前に、政治的抗議のシンボルとして拡散している海賊旗の取り締まりを強化している。
その海賊旗とは、日本の人気漫画「ワンピース」の主人公モンキー・D・ルフィ率いる「麦わらの一味」の海賊旗で、麦わら帽子をかぶったドクロマークがトラックや車、家などに掲げられる事例が相次いでいる。
こうした行為はプラボウォ・スビアント大統領の政策に抗議する「挑発行為」と広く認識されており、当局は、上半分が赤、下半分が白のインドネシア国旗と並べて掲揚してはならないと警告している。
海賊旗は今夏初め、不満を抱くトラック運転手らによって掲げられたが、最近ではオンラインおよび現実世界で雪だるま式に拡散している。
スマトラ島のリアウ州に住む大学生、カリク・アンハルさん(24)はAFPの取材に対し、「腐敗したこの国で掲げるには、赤と白の旗(インドネシア国旗)はあまりにも神聖すぎるので、個人的にワンピースの旗(麦わらの一味の海賊旗)を掲げた」と説明。
「インドネシアに言論の自由があると信じているが、非常に制限されている。意見を表明することがますます危険になっている」と続けた。
政府当局者は、海賊旗の使用は国家を分断する試みだと主張。
海賊旗を国旗と並べて掲揚することや、日本の降伏により第2次世界大戦終結した後、独立を宣言してから80周年の節目である8月17日に掲揚することを禁止する可能性があると警告している。
ブディ・グナワン調整相(政治・治安担当)は先週、「この国の闘いと関係のないシンボルで挑発行為をすることは控えなければならない」と述べた。
閣僚らは処罰の根拠として、国旗よりも高い位置にシンボルを掲揚することを禁じる法律を挙げている。
同法では、国旗を冒涜、侮辱、またはおとしめる意図があった場合、5年以下の拘禁または約3万1000ドル(約460万円)の罰金が科される。
現地メディアによると、プラスティオ・ハディ国家官房長官は5日、プラボウォ大統領の言葉として「創造性の表現」に問題はないが、海賊旗と国旗は「比較を誘うような形で並べるべきではない」と述べた。
■「日本の漫画の旗にすぎない」
AFPは2日前に大統領府に海賊旗についてコメントを求めたが、回答は得られていない。
専門家によると、プラボウォ大統領の経済・防衛政策の一部は民主主義の後退を懸念させるもので、不満を抱くインドネシア国民は、反政府感情を間接的に表明する手段として海賊旗を利用している。
コンサルティング会社グローバル・カウンセルのインドネシア担当主任アナリスト、デディ・ディナルト氏は、「海賊旗のようなシンボルは、不満を言葉にせずとも拡散させることができる」「これは、国の一部が『乗っ取られた』という国民感情を反映している」と述べた。
中ジャワ州ボヨラリ県で食品販売業を営むアンドリ・サプトラさん(38)のように、1週間前から自宅で国旗の下に海賊旗を掲げている人々は、どのシンボルを掲げるかは自分で決めたいと語る。
サプトラさんは、「自分の意見を自由に表明し、自己表現をしたい」「これは日本の漫画の旗にすぎない」と語った。
オンライン文化は、インドネシア政府の腐敗や縁故主義に対する不満を表明する手段として人気がある。
インドネシアでは日本のアニメが人気で、1997年に漫画版の連載が始まった「ワンピース」シリーズで、海賊旗は権威主義的な世界政府への抵抗を象徴となっている。
2月には、プラボウォ首相による大規模な予算削減に反対する「ダーク・インドネシア」と呼ばれる抗議運動が始まった。
きっかけは、ソーシャルメディアに投稿されたインドネシアの神話に登場する神鳥、黒いガルーダと「緊急警報」の文字を描いたロゴだった。
2016年と2019年にもオンラインで抗議運動が起きた。デディ氏は政府が「今回の抗議運動もこれらと同じデジタル時代のやり方にならっている」と懸念している可能性があると指摘している。
世代間の溝もある。年配世代は国旗を何世紀にもわたる植民地支配の末に苦労して勝ち取ったものと捉えている一方、若い世代は新たな抗議運動を失望の表れと捉えている。
■警察の強制捜査
インドネシアのソーシャルメディアモニター「Drone Emprit」の創設者イスマイル・ファフミ氏は、「彼らはただインドネシアが良くなることを望んでいるだけなのに、それを表現できるのは『ワンピース』の旗だけだ」と述べた。
首都ジャカルタに隣接するバンテン州と、インドネシアで最も人口の多い西ジャワ州の警察は、海賊旗を国旗と並べて掲げた場合、措置を取ると警告している。
中ジャワ州のある印刷会社の経営者は匿名を条件にAFPの取材に応じ、6日夕方、工場が私服警官による家宅捜索を受け、海賊旗の生産を停止させられたと語った。
人権団体はこの対応は行き過ぎだと非難し、インドネシア国民は法律で海賊旗を振ることが認められていると主張している。
人権団体アムネスティ・インターナショナル・インドネシアのウスマン・ハミド事務局長は、「批判者として『ワンピース』の旗を掲げることは言論の自由の一部であり、憲法で保障されている」との見解を示した。
政府による警告にもかかわらず、インドネシアには依然として抗議というリスクをいとわない若者もいる。
先述の大学生、カリクさんは6日、「昨夜、友人と一緒にワンピースの旗を掲げて街を歩いた」「政府が自国民を抑圧するの恐れないのなら、私たちも悪い政策と闘うのを恐れてはならない」と語った。【翻訳編集AFPBBNews】』
インドネシアで日本のアニメ「One Piece」のルフィーの海賊旗があちこちで掲げられているというニュース。
最初このニュースを見たとき、ルフィーの海賊旗を掲げるなんて、ユーモアがあるなと思ったが、記事を読むにつれて政治的な話だとちょっと驚いた。
写真などを見てもらえばわかるけど、ルフィーの海賊旗はアニメの旗でドクロの絵だ。元々海賊旗だからね。
でも、このルフィーの海賊旗は、権威主義的な世界政府への抵抗を象徴となっている。
「One Piece」のストーリーが、現在のインドネシアの政治不満を表すのに適していたということだろう。
インドネシアは独裁国家とは言えないが、権力は継承されている。
現在のプラボウォ・スビアント大統領は第2代のスハルト大統領が義父である。
インドネシア政府は海賊旗を反政府運動として、国家を分裂させる分子という見方をしている。
スマトラ島のリアウ州に住む大学生、カリク・アンハルさん(24)はAFPの取材に対し、「腐敗したこの国で掲げるには、赤と白の旗(インドネシア国旗)はあまりにも神聖すぎるので、個人的にワンピースの旗(麦わらの一味の海賊旗)を掲げた」と説明しているように、現在のプラボウォ・スビアント大統領の政策に不満を持っていることを明確にしている。
実名で言うのは逮捕の可能性があるから怖いという人も、海賊旗を掲げることによって不満を表明することができる。
言葉で何も表明していなければ、インドネシア政府関係者に何か言われてもアニメの旗を掲げているだけという逃げ道がある。
政府による警告にもかかわらず、インドネシアには依然として抗議というリスクをいとわない若者もいると書かれているように、現在のインドネシア政府に不満を持っている人は多いようだ。
インドネシアは1億以上の人口を持つ東南アジアの大国で、最近では国力と共に世界的地位も上がってきている。
一方で、まだ貧しいインドネシア人も多いわけで、SNSでその運動が拡散されているという事だろう。 言論の自由がどこまで保証されるかが気になる。
それにしても、インドネシアで抵抗の象徴が、日本のアニメの旗とは。
ここまで一般インドネシア人に浸透しているアニメ「One Piece」って、メチャクチャ凄いなと改めて思った。
別の意味では、日本アニメって海外でも影響力あるんだなと認識させる事件だよね。