イタリアから日本の将来を見る
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130222-00000080-reut-eurp
『[ミラノ 21日 ロイター] イタリアでは過去1世紀以上、貧しさから逃れようとする非熟練労働者の海外移住は続いてきた。
しかし、景気後退が続く昨今では、専門的な知識・技術を持った人材が国を離れる「頭脳流出」の波が押し寄せている。
海外を目指す技術者、研究者、起業家たち。景気後退が続くイタリアでは、失業率や緊縮策の影響、汚職スキャンダルに対する国民の不満が高まっているが、今週末に行われる総選挙が社会に渦巻く閉塞(へいそく)感を打ち破ると考える人はほとんどいない。
経済学部卒で約3年前に米西海岸に移住した起業家アンドレア・バッラリーニさん(32)は、「私はイタリア人で、イタリアを愛している。ただ、私の目には帰国する度に少しずつ後退しているように映る」と嘆く。
イタリア随一の名門校、ボッコーニ大学を卒業したバッラリーニさん。卒業当時は国を離れる計画はなく、母国でコンピューター会社を設立する夢があったが、経済危機に見舞われ始めた3年前、大西洋を渡った。
「ビジネスパートナーと私は、サンフランシスコ行きのチケットを買った。シリコンバレーを見てみたかった」と振り返るバッラリーニさんは、企業優先の西海岸の雰囲気に魅了され、仮想見本市のプラットホームを提供する会社を立ち上げた。
「イタリアでは毎日、解決しなければいけない問題のリストがあった。でも、ここでは毎日やりたいことのリストを作っている」
<ロストジェネレーション> イタリアの若者は現在、高まる失業率、縮小する経済活動に直面。大卒者が不安定で単調な職に就かざるを得ない経済状況に幻滅し、昔の世代と同様に外国で出世する道を選んでいる。
国立統計研究所(ISTAT)のデータによると、学位を持つ海外移住者は2001─10年で倍増し、全移住者の15.9%を占める。
彼らは英国やドイツな ど欧州各国のほか、就職に制限があるにもかかわらず、米国にも移住している。
月収はイタリアに残る専門職に比べると、平均で540ユーロ(約6万8000 円)高いという。
イタリア人が北南米に移住を始めたのは19世紀後半で、次の移住の波は第2次世界大戦後に訪れる。
イタリア人の移住の歴史に詳しいピエトロ・ルイージ氏は、「第2次大戦直後や1960─70年代、移住者の大半は貧しい非熟練労働者だった。これに対し、現代の移住の実態は全く違う」と指摘する。
2011年半ばから景気後退が続くイタリアの若年失業率は約37%で、20年前の統計開始以降で最高水準。
「失われた世代(ロストジェネレーション)」も今回の選挙の主要な争点となっている。
また、失業率が高まる一方、能力ではなく人脈による縁故採用が増加しているとみられており、大学などに在籍中に国外移住するケースもあるという。
プロフーモ教育相の顧問、マリオ・カルデリーニ氏は、「博士課程の学生や研究職に就くために学ぶ数万人もの人材がイタリアを離れている。最高レベルの学生や研究者を失い、その穴埋めができるほど有能な人材を呼び込むこともできていない」と述べた。』
イタリアの経済悪化で頭脳流出が懸念されているというニュース。
記事ではイタリア人はかつて貧困からアメリカや中南米へ移住した歴史がある。
イタリア人の移民史は今に始まった事ではないが、昔と違う点がある。
昔の移民は単純労働者が大半で、イタリアで食えなくなったから新天地で頑張ろうと言う移民だった。
しかし、最近では単純労働者ではなく、学歴の高いイタリア人の若者が海外に移住するようになってきたという。
このニュースを見て、正に日本と同じだと思った。
日本もかつて貧困から海外に渡った。 ハワイなどはその典型的な例だろう。
当初の日本人移民は海外出稼ぎと言う意識だった。さとうきびプランテーションなどで金を稼いで故郷に錦を飾ると言う感じだった。
本当に永住して頑張ろうと意識し始めた最初の日本人移民はメキシコの榎本殖民であろう。
これは五稜郭で幕府軍として戦い、その後明治政府の外務大臣にもなった榎本武揚がメキシコのチアパス州に土地を購入して日本人移民の国を作ろうと言う発想で行ったものだ。コーヒー農園をしようと試みたのだ。
国際情勢にも精通していた榎本武揚は農業にも凄く関心を持っていて、東京農大の元を作った事でも知られている。
残念ながらこの榎本殖民はうまくいかなかった。しかし、日系人と言えばブラジル人やペルー人のイメージが強い中、中南米最初の移民はメキシコだったのは紛れもない事実である。
そして、現在の日本。バブル崩壊後の失われた1990年代。それから10年が経って国際力を見ると物作りに関して、中国、韓国の企業が台頭してきて、日本企業は青色吐息。
円高の影響もあってシャープやパナソニックなど日本を代表する国際的な企業の経営が危機にさらされてきている。
安部政権になってようやく円安になり、一息ついているのが現状だろう。
イタリアの頭脳流出と似たような状況になってきていないかな?幸いゲーム業界などIT関連は日本でも頑張っているようだから、イタリアと全く状況が同じというわけではない。
でも他人事ではないと言う感じだね。 頭脳流出は国力の面からも考えていかないといけない問題だ。
少子化が問題になっている中、若者の頭脳流出が進めば、どういう事になるかは想像に難くないだろう。
イタリアの例でもわかるとおり、いかに魅力がある未来を描けるようにするか。
一方で、学校へ行ったり仕事をしたりする意欲を失っている若者も増加しているというデータがある。 こちらも大きな問題。
若いうちに仕事をしていなくて、中高年になって仕事ができるわけがない。例え単純労働でもそこから学ぶ事はある。
親が大金持ちで一生働かなくてもいいくらいの財産が得られる極一部の例外は考えなくても良いが、社会に出て働いていないニートはどんどんその社会適応能力や学習能力が衰えているという事にならないだろうか?
例え単純労働でも日本は教育水準が高いのでミスが少なかったり、仕事に対する意欲の高さから良い物ができると言われてきた。しかし、これからはそのような状況も崩れる可能性がある。
最悪の日本のシナリオは、技術を持った若者やエリートと呼ばれる若者がどんどん海外に移住をしていき、残った若者は以前の若者と比べると労働意欲や仕事の効率性などでかなり劣るような状況になることだ。
これは過疎化問題とよく似ている。高齢者ばかりになれば仕事の効率性などは以前と比べれば落ちる。その地域の未来を担うはずの若者はもう他の土地に行っていない。
今の日本で過疎化でどういう事が起こっているか。それは将来の日本と重なる部分がある。
単純にイタリアの問題としてではなく、日本人もその辺をもっと考えて、企業を元気にし、雇用に関してもっと色々なパターンを考える必要があると思うな。
日本企業の年功序列方式が崩れ去ったのに、まだその影響が見えないところで大きく残っている。 中高年の年齢による雇用制限もある。
これは一見若者問題と関係ないように見えるが、働いていた父や母が職を失い、新しい仕事の給料はかなり少なくなった状況を考えてみよう。
その子供はヤル気があって能力があっても、高等教育が受けられず、将来に夢が描かれない状況になりはしないだろうか?
これに関しては親の財力に頼るのではなく、大学独自や政府からの奨学金制度を充実させる必要があるように思う。
日本ははっきり言って奨学金制度でかなり遅れている。
本当に優秀ならタダで教育を受けさせ、その代わり卒業したら何年間か社会や企業のメリットになる事をさせるなどの条件をつけても良いと思う。
親の経済力で子供の将来を左右するような現状を少しでも変えていくことが、魅力ある将来を作る一助になると思うな。
【送料無料】若年労働力の構造と雇用問題 [ 原みどり ]
|