母の服も半分は持ち帰った。
そのうち、着せてあげられるものは半分もない。
伸縮性のないシャツやパンツは着せるのが難しいし、
襟元が開いているカットソーは、痩せてしまってゆるゆる
になってしまうからだ。
母は外出する時は、勿論きちんとした服を着るが、
家の中では
「この服、まだあったの?」と驚くほど昔の服を
着ている時がある。
それは、私が若い頃に着ていた服だったり、
孫が着なくなったジャージだったりする。
母にとっては思い出があり、勿体ないと言う思いで
捨てずに着ていたのかもしれないが、
そんな服までは持ってこられない。
ごめんね、お母さん。
母の部屋の棚の上には、脳に良いというサプリメントが
あった。
言葉が出なくなってきたことを気にして、慌てて飲み始めた
ものだった。
DHAやEPA、プロポリスも飲んでいたのにな…。
それも持ち帰った。
幸い、嚥下機能はしっかりしているとSTさんから伺っている。
気休めでもいいから、飲ませてあげよう。
倒れる前の習慣を、少しでも取り戻してあげたい。
母の部屋を見渡して、いつかまたこの部屋に母と一緒に
来られたらいいなと思った。
他にも持ち帰りたい物があるかもしれない。
母が帰る場所は、母が建てた家の 母の部屋ではないけれど、
母にとって居心地のいい部屋にしたい。