今、伊豆高原駅へ向かっている。

お渡しする長さ136cmの作品と共に。
「新選組…」と書かれたその作品を現地に直接、納品に伺う今日という日を迎えるまでに、再開とご縁と何より感謝という言葉が私を支えてくれた。

オフィシャルになったのでオープンするが、納品場所はABBA resorts  IZU 坐漁荘様。
1月11日から3月31日まで「日本刀祭」が行なわれるのだが、この度は館内にある刀ギャラリー前の看板「新選組と名刀たち」を揮毫させて頂いた。
その納品である。

ここまで至ったのは自分の力では無い。
ご縁が生んだ仕事であり、作品である。

以前より応援をして下さっていて、気に留めて頂いている大先輩、片野さんからお声を掛けて頂き、クライアント担当の金さんをご紹介頂いた。
金さんはお忙しいにも関わらず、私がしつこく作品制作に関する連絡をしても、とても気さくに答えて下さった。
トントン拍子で納品まで進むかと思いきや、表装業者より「年内納品は難しい。1月7日に納品となる」と連絡があり、年内納品希望であった金さんも私も窮地に立たされた状況だった。
1月7日に看板が掛けられなければ、イベントに穴が空く、いや旅館の顔を潰し兼ねない。

しかし、その大ピンチを救ってくれたのが横浜キョー和の中澤店長だった。
横浜キョー和さんは、私が暇さえあれば行っている書道用品店である。
他にもG文具、K堂、F出版などが横浜に点在していて他にも行く事はあるが、キョー和の店員さんの気さくなところが好きなのでよく行く。

困った私を見て、間髪入れずに「工場に掛け合ってみます!」と言ってくれ、30分後「年内28日店舗納品に間に合いそうです!ただ、万が一輸送中のトラブルがあった場合は年内は難しくなります。
賭けになりますが…」
可能性が少しでもあるなら賭けるしかない。
運に賭けてみた。

そして26日の10:00頃、店長より「作品が納品されました!」と連絡を頂いた。予定より1日早く。引き取りに伺った際も、手持ち用にしっかりとパッキングをして下さり、本当に有り難かった。

すぐに金さんに連絡した。
「…本当良かったです」と電話口で安堵の声を漏らしていた。

ご縁から始まり、ご縁で終わる。

そんな激動の裏舞台から完成した作品は、納品としては自身初の隷書作品。
紅星牌(こうせいはい)と言って、手漉き中国和紙の中でも質の高いものを使った。他の手漉き和紙に比べて、黒の厚み、渇筆(かすれ)、線の質が抜群に現れる。

いくつかの古典を全臨し、体に腕に染み込ませていった。

その思いのこもった作品を、今日納品する。
皆さんの希望が生んだ作品である。

だから、嬉しさもあるが寂しくもある。
でも、今日は笑顔で送り出してあげよう。  

さて、あと1時間30分。
小田原の見慣れた風景、熱海の海を見ながらこの作品と共に旅を楽しもう。