もともと海外で仕事がしたくて入社した会社だったので、初めて海外赴任を言い渡された時はうれしくて夢ならば覚めてくれるな、という気分だった。だけど同じ会社でも赴任を断る者もいる。事情は年代や家族状況によって様々だ。

 

・子供の教育の問題 - もっとも多いパターンで、小学生くらいなら子供連れで赴任ということになるが、中学生・高校生になると現地の日本人学校も少なく、現地校にも馴染みにくい。結果、40代での家族帯同赴任は難しい傾向にある。

 

・自分の結婚 - 特にトレンディドラマがはやった1990年代初頭には多かった気がする。婚約者がまるで海外での生活など想定していないと、海外赴任を切り出すと破談になったりする。上司としても、「もうあと一歩なんです。今回はご容赦下さい」と頭を下げられると無理強いはできない。

 

・赴任先が気に食わない - 欧米ならいいが新興国は嫌だという贅沢な理由。東南アジアも昔は今ほど生活インフラが整っていなかったので拒否する者がいた。確かに日本にいればまだまだ青春を謳歌できる30前後の独身者が、戒律が厳ししイスラム圏への赴任に難色を示すのは理解できる。独身でサウジアラビアで2年超を過ごした同僚は、帰任後その反動で毎晩のように合コン・婚活に励んでいた。

 

・社内政治 - 年齢と地位が上がってくると、海外に出して本社から遠ざけることで、競争相手を潰すという動きも出てくる。その手にのってたまるかと断る人もいれば、海外に出て関東軍みたいに現地で王国を築いて本社に逆襲する人もいる。

 

 家族を日本に残して単身赴任という道もあるが、長く続けるものではない。2000年代中国単身赴任者では、現地の女性とよろしい仲になった挙句、家庭崩壊したケースもいくつかあった。そうなってくると仕事面でもうまくいかなくなり、漫画「島耕作」みたいに格好よくいくものではない。

 

 自分自身はというと、アメリカ・チリ・パキスタン・UAE・メキシコ・シンガポール・香港と命ぜられれば全て赴任した。海外赴任を断るなんてもったいない。それによって特段出世したわけでもないが、後悔もない。「海外生活が好き」というだけでも、就職市場においてはひとつの強みなのかもしれない。

 

2007年チュニジア・カルタゴ遺跡 - 西地中海クルーズで訪問。