1984年に家電メーカーへ入社した際、1年目の新入社員は1ヵ月ずつ製造実習と販売実習に派遣された。当時の日本的経営を象徴する制度だが、近年は企業の研修費削減で廃止されたのかと思いきや、主要企業では今も続いているらしい。ただ、製造実習は工場が国内からなくなっている会社もあるので、どこを受け皿にしているのだろう。よもや1カ月間海外派遣して研修、ということもなかろうに、今度後輩にきいてみよう。
製造実習は千葉県にある工場で行われ、同期入社の者10名くらいが旅館に泊まり込んで参加した。初日の挨拶で工場の総務部長から「お前ら本社のヒモだ」と喝を入れられたのは忘れられない。同時に「近くの高校で『勉強しないとあそこの工場で働くことになる』と教員が生徒に言ったので抗議した」と嘆いていたのも印象的だった。福利厚生もしっかりしていて雇用も安定していた(派遣ではなく正社員だった)ので、昨今のブラックな雇用条件と比べればよかったとも思えるのだが、当時は製造業が日本経済を支えていたにもかかわらず、現場で働く人の社会的評価は決して高くなかった。
販売実習は年末セールで都内の家電店の売り場に立ったが、職場の先輩や上司が入れかわり立ちかわり会社帰りに様子を見に来てくれ(慰問)て、テープや電池を買ってくれた。いま思えば、こうしたやり取りこそ昭和らしい風景だった。
当時は日本経済が世界を席巻し始めた時代で、その中で会社の一体感を育む製造・販売実習が日本メーカーの強さの秘訣だという論もあった。日本に来たイギリス人の人事マネージャーに製造実習を体験してもらったりしていた(さすがに販売実習は言葉の壁があって無理だった)。終身雇用や年功序列が否定され日本的企業文化の旗色は悪いが、よいものを廃止することはない。ある意味、若い新入社員の製造・販売実習など欧米企業では真似のできないことだろうから、それを強みにしていけばいい。
1999年、ブカレスト・ルーマニア - 日食観測にあわせて訪問。後ろは国民の館(議会宮殿)。処刑されたチャウシェスク大統領が国力を注いで建てた建造物で、いわゆる「負の遺産」だが内部は一見の価値あり。
