27年間勤めた家電メーカーは社内教育・研修制度が特に充実していたわけではなかったが、振り返ってみるといろいろ勉強させてもらっていて、大学での海外研修プログラム企画時に役立っている。実務に直結していて、厳しさもあるのでそのまま学生に転用することはできないが、ワークショップ形式も取り入れ、また日本人が弱いとされるプレゼンテーション力向上にも早くから着手していた。会社によっては体力重視で自衛隊への体験入隊なんかもやっていた時代だから、それなりに進んでいたのだと思う。

 

1. 新入社員研修 - 文理融合、学部卒・大学院卒で入社した社員で5人くらいのグループを編成して会社が抱える課題を泊まり込みで議論する。後半は街でアンケート調査。

 

2. 1年目研修 - 製造実習・販売実習でそれぞれ1ヵ月製造ラインでの組み立て、店頭販売を経験する。

 

3. 3年目研修 - KT法を使った課題解決。泊まり込みでグループによる議論・発表。

 

4. 5年目研修 - 海外赴任中で参加しなかったが、英語で先行出版された会長の分厚い自伝書(いやらしいことにその時点では邦訳未刊)を課題図書に指定されて感想を発表する。英語と無縁の国内営業組は泣いていた。

 

5. 課長試験 - 自分のこれまでの業務経験、それをもとに今後どのように会社に貢献するかをPP5枚、5分で説明する。これで管理職への昇進が決まる。3カ月前くらいから職場の上司からも指導を受けてプレゼン作成、本番に臨む。

 

 この他、各国の海外販売会社の社長が集まる社長会では、毎回テーマが設けられていて、一般の販売状況報告に加えて発表を行う。1995年メセナ、2000年eコマース、2005年ボトム・オブ・ピラミッドといった具合で、それぞれ旬なテーマが参考図書とともに与えられた。

 

 当時は「面倒くせー」とため息交じりに取り組んだ研修もあり、講師を担当する人事課の人たちにはちょっと冷ややかな目を向ける気持ちもあったが、彼らも結構勉強していたようで今では感謝している。効率化や終身雇用制度がゆらいだことで、社内研修も以前ほど手間暇かけて行われなくなったかもしれないが、日本企業の強みの源泉として今後も改良発展させていってほしい。

 

2007年ドバイ・アラブ首長国連邦 - キャメル・ライド。行く先の砂丘には冷えたシャンパンが用意してある粋な演出。