あまり海外勤務に関心がない後輩がドバイへの赴任を命ぜられて、現地で上司になる人と初顔合わせをすることになった。「現地やイスラム圏について最近何か本を読んだか」と尋ねられたのに対し、「地球を歩く本」と答えて早速厳しい指導を受けていた。

 

 赴任や留学が決まったら、出発前に現地に関する書籍を読み漁ってほしい。ジャンルは何でもよくて、例えばメキシコに行くのならタイトルに「メキシコ」とあれば図書館で借りて目を通す。自分の場合、最低10冊くらいは読んでいた。例えば、

 

「物語 メキシコの歴史 太陽の国の英傑たち」(大垣貴志郎著、中公新書)

「新しいメキシコ 歴史と政治と経済」(菊池清明著、サイマル出版会)

「メキシコ多文化思索の旅」(高山智博著、山川出版社)

「メキシコ人はなぜハゲないし、死なないのか」(明川哲也著、文春文庫)

「トラテロルコの夜 メキシコの1968年」(エレナ・ポニアトウスカ著、藤原書店)

「マヤ・アステカ遺跡へっぴり紀行 メキシコ・グアテマラ・ホンジュラス・ベリーズの旅」(芝崎みゆき、草思社)

「メキシコ時代のトロツキー 1937-1940」(小倉英敬著、新泉社)

「辺境・近境」(村上春樹著、新潮文庫)

「メキシコ榎本殖民: 榎本武揚の理想と現実」(上野久著、中公新書)

「悲劇週間」(矢作俊彦、文春文庫)

 

 赴任中も一時帰国の度ごとに新刊があれば買っていく。現地では新聞の他、英書やスペイン語で書かれたその国の歴史や政治情勢に関する本があれば、直接ビジネスに関係なくても読むようにしていた。そんなことを続けて2~3年駐在すると、社内でもその国のエキスパートとしてある程度認められるようになる。また現地人とのコミュニケーションでも、「先日読んだ本にこんなことが書いてあった」と言うと会話が盛り上がる。

 

 国際交流の仕事では、これまで馴染みのない国からの来訪者を受け入れることもあるが、事前学習のやり方は当時の経験が活きている。かつまた古いものも含めて蔵書が豊富な大学図書館は便利で心強い存在だ。

 

アメリカ合衆国・アラバマ州1988年 - 東京本社から役員を迎えての歓迎会。田舎の駐在地だったが、月に1度は現地従業員も参加してこういった機会があった。本社にいては直接話す機会もない経営層の方にも親しく接して頂ける、これも海外駐在のメリット。