新たな国に着任すると、1週間くらいで住まいを決めることになる。独り身だとだいたいワンベッドルームのアパートを借りることになるが、予算の範囲内であれば高層階に的を絞っていた。眺望がよければお客をよんで宴会をやっても盛り上がる。借り手としては、そんな気持ちだったが、ある時ふと逆の立場で日本にいる外国人駐在員にマンションの高層階を貸せば、安定的な副収入が得られるのではないかと思い立った。時は2011年、任地のメキシコから中古不動産のサイトを検索すると、東京の湾岸地帯を中心にお手頃価格の物件が出ている。ある程度目星をつけておいて、帰任するや当面は自分が住むため、将来的には賃貸も視野に入れて新居探しを開始した。

 

 居住中の物件見学を避ける人もいるが、そんなことにはおかまいなく、とにかく景色がよさそうであれば、不動産屋に連絡して1カ月間で40軒くらいは訪問したか。居住者は売る立場、こちらはお客なので大概はにこやかに迎えてくれるか、ないしは見学の邪魔にならない様に気を遣ってくれたが、一味違った光景も目にした。

 

パパ活女子

最上階の部屋から出て来たのはすらりとした20代の女性で、ようこそという感じではない。しばらくすると父親くらいの年齢の男性が現れて内部を熱心に説明してくれた。想像するにここは別宅。ご寵愛が冷めたか、はたまた資金繰りに窮したか、売り急ぐ男性に対してどうも女性は追い出される模様で、売却に反対という雰囲気だった。

 

ゴミ屋敷

普通見学者が来るとなると、居住者はそれなりに掃除をして待っているものだが、足の踏み場もないほどちらかっている家があった。夫婦と高校生くらいの男の子の3人暮らしだったが、全ての部屋が皆同じ状況で、浴槽には前夜の残り湯が満々とたたえられていた。ペットの犬までいて、仲介業者が「リフォームすれば見違えるくらい綺麗になりますから」と変なセールストークをしていた。

 

身元調査

見学を申し込むと、オーナーから勤務先・年収を確認してから、許可するか否か決めるとの返答。結構です、とこちらからお断りした。

 

外国人

韓国人の若夫婦で、帰国が決まったので売りに出していると言っていた。ドラマに出てくるような美男美女で、室内も大変綺麗に使っていた。きっと財閥系の大企業駐在員か。日本での生活、楽しんだのだろうな。ちょっと羨ましい。

 

 友人からは、家に前住人の運気がまとわりついているので、事故物件でなくてもあまり変な人からは買わない方がいいとアドバイスされた。日本には新築信仰があって、中古マンション市場が成熟していないと言われてきたが、昨今活況を呈しているとのこと。居住中の物件見学にもうひと工夫あってもいいかもしれない。

 

メキシコシティー・メキシコ2011年 - 自宅でのホームパーティー、32階建ての31階部分。ジムとプールが共用部分にあって健康維持に活用させてもらった。