先週は火水とオマーンの首都マスカットへ一泊二日の出張をした。人口二四〇万、国土は日本の四分の三。石油非産出国でアラビア半島の中ではイエメンとともに昔のアラブが残っていると言われる。「オマーンでの生活は如何」と質問すると決まって「静かなものだ」という答えがかえってくる。在住二〇数年という外国人ビジネスマンが結構いるのも、ドバイに比べていくばくかスローで人の入れかわりが少ない分コミュニティーがしっかりした生活が魅力になっているせいかもしれない。

 当座預金にある程度金が貯まり、そのまま寝かせておいても利子がつかないため定期預金に切り替えるべく銀行へ行った。UAE通貨ドゥラハムでの一ヶ月定期預金の場合、毎月金利が変動し概ねそれは米ドルに連動している。昨年九月には四・六%くらいあった利子はその後毎月のように下がり続け、今月は二・一%で半分以下になってしまっている。とはいえ日本のコンマ数パーセントに比べればまだましで、湾岸諸国の通貨がドルに対して切り上がる可能性を考えると、預金としては悪くない選択だろう。

 大した金額ではないのだが、マネージャーの部屋に通された。部下と会話中だったが、かまわず入るとまず握手。ちょっと待っていてくれというのでソファーに座って部下とのやりとりを聞いていた。「顧客会社の従業員の一部に給料が振り込まれていないと苦情が来ています」「いつからだ」「半年前からです」結構深刻な問題である。部下が出て行った後、マネージャー氏は私を見ながら「ある種の人は熱い茶碗を持ったまま火傷をしそうになったら突然放り出す。熱かったらとっととテーブルの上に置けばいいじゃないか」と同意を求める。また別の部下が入って来て、外国人の口座開設手続きについて相談、終わると「仕事のやり方をわきまえず、常識のない部下が最近多すぎる」と呟く。確かに聞いている部外者の私でも話の内容がわかったので、初歩的な問題だったのだろう。その後ようやく定期預金の話となったが「あなたはいいお客さんなので通常金利に〇・二五%おまけして差し上げます」とにこやかに結論づけた。街中の土産物屋みたいに銀行の金利も交渉次第で変わるのか、と逆に不安になる。

 各国通貨の為替がどう動くか見えにくい中、資産をどこの国に持つかで個人の貯蓄は大きく左右される。世の資産価値よりも、自分として将来どこでどんな生活をしたいか、という生活設計が大切ではないか。重要度は家族、親しい友、そして美味いレストランと豊富な食材といったところか。オマーンは残念ながら地酒がないので終の住処として現在の私の選択に入っていない。