【精神的ダメージがやってくる!・・・⓸】
応接室では安田さんが置いてくれたお茶が、
まるで自分の心境を見ているかの様な湯気を立ち昇らせている。
ああ、こんな風に消えてしまいたい・・・
コンコン
「どうも、どうしたんですか~」
・・・アレ?何でニコニコしてんだ?
「あ、いや、あ、あの、大変申し訳ございませんでした、お待ち頂いていたのに、
結局行けませんで、結果的にドタキャンした形になってしまいまして・・・
あの、こちら、お口に合うかどうかわかりませんが、
ご迷惑をおかけしてしまいました皆様へ、お茶請けにどうぞ。。。」
「これはどうも!そんな気をつかわなくてもいいのに、すみませんね~。」
高津は、加藤屋の割と大きめの箱の入った袋の取手を、
香取からスッと笑顔で受け取り、ニコニコしながら、
「ホント恐縮です。」
もう一言、お礼を言ってきたのであった。。。
こんなとりたてて「常識の範囲内」のやりとりも、今の状態の香取には、
正常に判断出来てはいなかった。
「さて、香取さん、ま、色々事情はあったと思いますが、いかが致しますか?」
あれ?高津さん、電話じゃ結構怒ってたみたいだけど、なんか怒ってないっぽいな~。
「いえ、本当に申し訳ございませんでした。C社様から緊急の連絡があって、
高津さんにメールして訪問をお断り入れてからC社様へ向かったのですが、
メールが送信エラーが出ていてそれを気づかずに・・・。」
「いやいや、いいんですよもう別に。ただ、事前に言ってもらえればこちらも別の仕事を
したり出来たんですが・・・まあ、いいですよ、今後また繰り返すようならお取引自体も
考えないといけないとは思いますが、これっきりにしてくれれば後は気を付けて下さいとしか
言いようがないですし。」
ニコニコしながら言っているが、『お取引自体も考えないと』 って、
そうかそういうことか!やっぱりそんなことも考えてるんだ!
ニコニコしながら凄いことを言われたということで、
安定しない香取の気持ちが更にグラつく。
「は、はい。もう二度とないように気を付けます。」
「ま、わかって頂ければいいですから、では、わざわざ来て下さいまして、
有難うございました。また次回来る日、よろしくお願いしますよ。」
「はい、宜しくお願い致します。」
早くこの場から立ち去りたい香取にとって、
嬉しい瞬間だった。
しかし、気になる。
終始ニコニコしていたかと思うと、
『お取引自体も考えないと』
という一言。
普段は結構色々と突ついてくる、嫌なやりにくい感じがあった高津さんが、
こんなことがあったのにニコニコしてたし・・・。
気になる。
まあ、村田さんに、とにかく早く会って報告しないと。
そう思うと、さっきの公園でやたらと携帯が気になり始めた。
(つづく・文中は全て仮名です)