余談

この掛け軸の漢詩は、本文を数えると28字になります。したがって、4行詩に直すと1行7字となるため、七言絶句であると分かります。

 

 

よく漢詩には韻を踏まなければならないと言われます。どういうことかと言いますと、4行の詩は、起句、承句、転句、結句の4句に分類されますが、それぞれの決められた個所に押韻(韻を踏むと同義語)する必要があるのです。

 

決められた個所とは、起句、承句および結句の末尾に押韻するということです。

すなわち、28字のうち、7字目、14字目、28字目には、同じ韻目(同じ韻のグループ)の文字を当てる必要があるのです。

この詩で、その文字を探すと、誇、加、花の3文字ですね。

これらを音読みすると、コ、カ、カと発音できます。ここで3つの文字はよく似ていると感じられます。事実、辞書で調べると、平声(ひょうしょう)30韻という韻目のうち、下平声6番目の「麻」というグループであることが分かりました。

正確にはこのように辞書で確認するのですが、簡易的に推定する方法があります。それは、同じ韻目の文字は類似の発音が多いことを利用するのです。

 

先ほどのコ、カ、カ、も、どこか似た発音ですよね。

ほかの例では、上平声2「冬」の韻目では、冬、松、重、胸、逢、溶、凶……と、音読みすれば、発音が似ているでしょう。下平声1「先」の韻目の場合はどうでしょうか。先、研、天、煙、伝、田、辺、眠、前……と、これも似た発音です。

以上のことから、どこかで掛け軸などの漢詩を観る機会があったら、まず、7、14、28字目の漢字を音読みして似た発音であれば、それが同じ韻目の中の文字を用いている確率が高いということになります。