「月照墓前作」 西郷南洲
★「月照墓前の作」 西郷南洲
相約して淵に投ず 後先なし
あに図らんや波上 再生の縁
頭を回らせば十有余年の夢
空しく幽明を隔てて 墓前に哭す
鹿児島県の英雄と言えば筆頭に上げられるのが西郷南洲こと西郷隆盛公でしょう。鹿児島藩士の西郷は名を吉之助、後に隆盛と称しました。島津公に仕え藩政に参画、総督府参謀となり、明治六年陸軍大将に任ぜられました。
征韓論を唱えましたが意見が入れられず、故郷の鹿児島に帰国します。明治十年に兵を挙げて西南の役が勃発します。逆賊の汚名を着せられますが今でも英雄の誉れが高い人物です。
月照は京都清水寺成就院の僧。尊皇の志が高く幕府の追求を受け薩摩に逃れます。薩摩にも幕府の手が伸びてきたため、西郷隆盛、月照、平野国臣、他1人の四人で,安政五年十一月十一日に入水自殺を図ります。
西郷は漁師に救われ蘇生しますが、月照は亡くなってしまうのです。この漢詩は西郷が盟友を亡くした慟哭の詩でもあるのです。形式は仄起こり七言絶句です。