個人の趣味での材料入手が難しかった頃
浮世絵や家紋に箔を用いて作品に仕上げるという手法を学んだ
おかげでいろいろなものに挑戦しました。
浮世絵は葛飾北斎の絵が好きだったこともあり「富嶽三十六景」
の中から題材を選んだのです。
そのほかには、喜多川歌麿の美人画、や歌川広重の東海道五
十三次などです。
その昔、集英社が刊行した「浮世絵大系」全17巻を購入して座
右に置いて浮世絵の原画としました。
しかし、ここで困難な事態に遭遇したのです。それは何かと言い
ますと材料入手が難しいことでした。
これまでは東京で学んだ研究会経由で入手していましたが、そこ
が業務を閉鎖した関係で入手不可となってしまったのです。
そこで某箔粉製造会社に直接手紙を書いて、金箔、銀箔、色箔、
箔粉などを小分けで販売して貰えるかを頼み込んだのです。
通常は企業間で数千枚単位の箔や、数百キログラム単位の箔粉
の取引を、一個人が100枚単位、500グラム単位くらいで購入し
たいという申し出ですから企業も戸惑ったと思います。
しかし、京都のその製造会社は当方の意を汲んでくれてオーケー
してくれました。その企業の誠意に対して、現在でも感謝の念で一
杯です。
今では、時代も変わりネット販売なども普通になって随分便利にな
りましたが、実際の技術・技巧問題とは別の次元での苦労もあった
訳ですね。感慨深い気持ちで振り返っているところです。
葛飾北斎
富嶽三十六景から「山下白雨」