
源十郎は、鎌倉の西の方の佐助というところに広い畑を借りると、きつねのいうとおりに、たくさんの大根を育てました。
大根が大きく育つと、まちに行って売ることにしました。

その頃、鎌倉のまちでは、悪いやまいが流行っていました。
たくさんの人々が、やまいにかかって、道ばたに倒れたり、動けなくなっていました。
「だれかー、だれか助けてくださーい」
「水、水をくれー」
まちの中は、人々のうめき声でいっぱいでした。

ある家では、娘がやまいにかかって苦しんでいました。
娘が言いました。
「今、夢の中に神様が現れて、源十郎という人のつくった大根を食べると、やまいが治るって言われたのよ」
「何だって。大根だって」
お父ちゃんもお母ちゃんも、娘が何を言っているのかわかりませんでした。
そのとき…

「だいこんー、だいこんー、おいしい大根はいかがですかー」
かごの中にたくさんの大根をつんで、源十郎が通りを歩いていました。
「あんたが源十郎さんかい」
娘のお父ちゃんが、声をかけました。
「そうだ、おいらが源十郎だ。おいらのつくった大根を買っておくれ」
娘のお父ちゃんは、源十郎から大根を一本買いました。
「まいどありぃ」

お母ちゃんが大根を煮て、娘にひとくち食べさせると、すると、どうでしょう。
なんとなんと…

娘の顔色がみるみるうちに良くなり、さっきまで苦しんでいたのがウソのように、ねどこからはねて、起き上がりました。
「あれまぁ、なんてこったい」

娘のやまいが、源十郎の大根を食べて治ったことは、たちまち、まち中に知れわたりました。
「金はいくらでも出すから、その大根を売ってくれ」
「おれにも一本」
「おれには十本くれ」
と、大騒ぎになりました。
源十郎の大根には、とても高いねだんがついて、畑にあった残りの大根も、あっという間に売り切れてしまいました。

大根を売って、すっかり大金持ちの長者になった源十郎は、大根をつくるようにと教えてくれた、きつねへのお礼に、小さなおやしろを建てました。
「ここに住めば、もう野良犬に追いかけられることもあるめえ」
「おめえのおかげで、やまいに苦しんでた人たちが、みんな治ったし、おいらの大根もたくさん売れてもうかった。ありがとうよ」
そのおやしろが、今の鎌倉の佐助稲荷であるということです。
おしまい。