瀕死の状態のマリオを置いて、祝日の月曜の朝早く出かけて行ったリサ一家。私は気が気でなく、昼前に一度マリオの状態を見に行く。
マリオは私を見ると、ベットから出て伸びをして見せた。ちょっと安心。でもリサたちが残していった餌を見ると、やっぱりドライのものと缶のものが混ぜてある。私は真っ先にそれを捨てて、新しい缶を開けて、ぬるま湯を少量注ぎ、マリオがえさを食べるときに水分もとれるようにしてみた。
マリオは早速それを食べてくれたので、一安心。缶を半分ほども食べてくれたあと、マリオはまたベットに戻っていったので、またあとで来ることにしていったん家に戻る。
そして午後6時すぎ、また様子を見に行く。マリオはベッドに寝たまま、玄関先の私の顔を見るが、今度は起きる気配はない、というより起きたくても力がない、といった感じ。急いで近くで見てみると、その衰弱ぶりがはっきりとわかる。あまりにかわいそうなのと、動物をこういう状態にしたまま出ていくリサたちへの怒りで思わず泣いてしまう。
悔しくていてもたってもいられず、いったん家に戻り夫を連れてくる。私はこの時点で、リサがなんと言おうと、翌日獣医に連れていくつもりだった。でも万が一のことも考えて、私以外の人にもそれが正しい決断であることをサポートしてもらいたいと思っていた。
やってきた夫は、マリオを一目見て私と同じ気持ちを抱いているようだった。「このままじゃ死んじゃうよ。」
私も同感。でも、獣医は高いから避けたいというリサの意向が、小心者の私には気になってしまう。そこで、リサが仲良くしているもう一軒隣のイザベルの意見も聴きに行くことに。リサが、出かける前「もしマリオの容体が変わって不安だったら、イサベルがいつでも来てくれって言ってたから。彼女聴診器あるんだって。」と言っていたのを思い出したから。さらに、リサとイザベルは同じ年頃の子どもがそれぞれ2人ずついるので、よくお互いの子供を見あっていたので、リサも、イザベル(後でナースであることが判明)の意見ならもっとよく聞くだろう、と思ったわけである。
イザベルもマリオを見てかなりショックを受けていた。獣医に連れて行こうと思っている、ということを言うと、彼女も賛成してくれたので、その晩リサにメールでマリオの状態が悪いことと、獣医に連れていくこと、費用はとりあえずは私が払うことを伝えた。
リサは、「心配掛けて申し訳ない。それなら私の友達で近くで仕事している人がいるから、彼女に昼前にきてもらってマリオを連れて行ってもらうわ。」そしてわたしは仕事の終わった後病院によってマリオをピックアップするということにした。
次の日、朝早く仕事の前にマリオを見に行く。同じ状態で、餌も食べようとしない。でも「今日は病院に行けるからそれまで頑張ってね」と何度も言って仕事に行く。
とはいえ私はマリオのことが気になって、仕事に身が入らない。マリオが何らかの事故に合ってから少なくともまる2日はたっているのだ。朝見たマリオの衰弱した様子が目に浮かぶ。
1時半になってもリサからのメールがない。予定ではその友達とかに11時半に獣医に連れて行ってもらう予定なのだ。その間も、事故から一切ケアされていないマリオが、この先2-3週間は帰ってこない家族のことを何も知らずに待っていると思うと、もう我慢が出来ずリサに電話する。
「マリオ病院にいるの?」
「それが、ジャニス(リサの友達)と連絡が取れないのよ。一応3時半に予約を入れてあるんだけど・・・。」
「でも彼女、マリオを連れて行ってくれるって言ったんでしょ?」
「そうなの、でも電話が通じないのよ。連絡取れなければ、あなたが仕事終わった時点で、5時過ぎに連れて行ってもらえればそれでもいいけど・・・。とにかく今もう一回かけて見るから。」といって一旦電話を切るリサ。
時間を見ると2時少しすぎ。今から仕事を出れば3時半までには何とか間に合いそうだ。
リサからの電話を待てずもう一度かけなおす。今度はドウェインが出る。リサは運転中とのこと。私はドウェインに向かって、ほぼ一方的にまくしたてた。
「私が今から仕事を切り上げていくってリサに行って!3時半の予約に絶対マリオを連れていきたいから。」
電話の向こうで私にお礼を言うドウェインにろくに返事もせず。大急ぎでパーキングに向かう。私は普段安全運転で、夫に笑われることが多いのだが、この日ばかりは高速も120キロで飛ばした。とにかく胸の中は怒りで煮えくりかえり、家に着いたらマリオがもう息を引き取っているのではないかという不安もあり、思わずアクセルを踏み込んでしまう。
こういうときに限って、高速が一車線減らされており、一区間ノロノロ運転に。私はストレスで爆発しそうだ。
やっとのことでその区間を乗り切ると、またアクセルを踏み込んで家まで飛ばした。
家に着くと、自分の猫ミヌーへのあいさつもそこそこに、ベースメントからミヌー用の大きいキャリアーを持ち出して、マリオの家へ。茫然としているマリオを、ベッドごとキャリアーに入れ、獣医に向かう。その間も「もう少しでお医者さんに診てもらえるからね。よくなるからねー。」とマリオに話しかけ続けた。
3時半ちょうどにクリニックに到着。
しばらく待った後、いよいよマリオを見てもらえることに。やってきたのは、30代前半のナイスな男性の獣医さん。ファッショナブルなメガネがよく似合っている。「アーロンです。あなたがリサの代わりに連れてきてくれたんですって?リサとマリオはラッキーですね。」
アーロンはとても注意深く、マリオを診察してくれ、思った通り、マリオの状態は非常によくないものであることを説明してくれた。真黒にしかみえない右目も、アーロンが部屋の電気を消して、目にライトを向けると実は真っ赤に充血しているのが見えた。この目ではもう何も見えてないことを確認すると、こういう場合、目を摘出するのが一番いいこと、そしてつぶれた上顎の様子から、木から落ちたというより、交通事故ではないか、という診断をしてくれた。
私は自分の気持ちを抑えて、リサの電話番号を渡し、アーロンが別室でリサに話すことに。10分ほど待って帰ってきたアーロンは、「リサはとりあえずは現状維持ということで、今日は診察だけしてほしいそうです。」とすこしがっかりしている。当たり前である。
わたしは彼らがこの先最低10日は帰ってこないことを伝え、その間に私ができることを聞いた。アーロンは、「もしリサが手術に踏み切るということになれば、それまでにマリオがよく食べて、手術に耐えられる元気をつけておくことが大事です。痛み止めを何種類か出しておくので、あなたにとっては大変な役割になってしまいますが・・・」というので、「全然大丈夫です!It will be my pleasure!!」と笑顔で答えた。
お節介かもしれないが、私にとって、一番大事だったのは、マリオから少しでも痛みをとってもらうこと。マリオは何にも悪いことをしていないんだから。マリオだって本当は私なんかじゃなく、家族に世話してほしいだろうに・・・。でも誓って言えることは、Mario will have my full attention!ということ。
アーロンが痛み止めの注射を二本してくれたのを見て、私はそこでやっと風船がしぼむように、ストレスから解放された気がした。アーロンは、私の連絡先を聞き、数日後に電話しますと言って診察を終えた。
この日の費用は約300ドル。リサにとってはこの出費は痛いことはなんとなくわかっている。でも私はマリオが元気になってくれれば、お金なんか返してもらわなくてもいいと思っていた。もっといえば、結局私は自分が安心したいために、マリオを獣医に診てもらったのかもしれない。
家に帰ってくると、マリオは私が新しく開けたフリスキーズの缶を、一缶ぺろりと食べてしまった。それから毎日、朝晩マリオの世話が始まったが、3種類ある薬の2種類は一日2回あげなければならない。2つはシリンジで、液状の薬をマリオの口にぴゅーっと入れるというかなりのテクニックを要するもの。さらにもう1つは、目に塗る(!)軟膏なので、マリオはこの薬タイムを嫌がったが、日に日に私にも慣れてきて、ドアを開けると、ゴロンと床に横になり、「なでなでしてー!」という恰好をする。餌もよく食べているので、このまま頑張ってほしい。
がんばれ、マリオ!
















