近頃、酒を飲む若者が減ったという話を聞く。
ビールの出荷量も何年連続で減少しているといった数字が躍る。
それは、酒造メーカーにとっては憂慮すべき事態なのかもしれないが、他方、人間の健康の増進に資する”画期的な変化”だと言えなくもない。
あるいは酒を飲まない人間が増えたことを、「人類の進化」と捉える向きも広がりつつある。
それを”逆対岸の火事”的に、毎日酒を飲む自分が吹聴するということはいささか不自然なことかもしれない。
今まさに、自分たちのテリトリーが火の海に喫しているというのに。
対岸の平和な日常の活況を、火に巻かれ、のた打ち回り、黒煙を吸いながら喜んでいるも同然ではないか。
お人よしにも過ぎるだろう。
ある”デジャブ”がよぎった。
ヘビースモーカーが、非喫煙者に対して語る「たばこなんか吸うもんじゃないぜ」の捨て台詞。
ギャンブル依存者が、「パチンコ・競馬なんかやってるやつはクズばっかりだ」と言って見せるあの図式。
ただ一瞬だけ過った(過ってしまった)のは、そんなふうにアリ地獄から外界へ励ましのメッセージを送るというのは、なかなか贅沢な経験なのかもしれない。