チキ風呂 -20ページ目

チキ風呂

チキ風呂

あの後どうやって家にたどり着いたのか覚えていません。

牛乳の臭いにおいのした制服を脱ぎ、シャワーをあびると、食事もとらずに部屋に閉じこもりました。腕には締め付けられた感触が残り、耳にはげらげら笑う声がこびりつくように残っていました。震えがとまりませんでした。永遠に夜が明けなければいい。このまま核ミサイルでもとんできて全部消滅すればいい、と思いました。


深夜メールの着信がなりました。あの画像が送られてきたのかもしれない。おそるおそるケータイを開くと、秀弥君からでした。近くのコンビニにいるからきてほしい、と書いていました。しばかれるのではと思いましたがいくことにしました。

秀弥君は無言で紙を取り出し私の顔の前に突き付けました。目をこらしてみると数字が書かれていました。それが血液検査の結果だと気づいたのは、最後の項目を見た時でした。

HIVに感染していませんでした。確かにその人の血液を飲んだくらいだし、SEX、キス等をしていないわけですから、感染する確率は低いことはわかっていました。


翌朝教室に一人で入ると一部の男子からミズホコールがきこえました。私は誰とも目を合わさず、自分の席に向かいました。

りょう君は言いました。

ーおっと少年A、何か言いたいことでもあんのか?

りょう君は馬鹿にしたように言いました。秀弥君は何も答えず、自分の小指の先をかみ、その指でりょう君の右のほおをたてにスッとなぞりました。りょう君のほおには赤いすじが残っていました。秀弥君の血液です。近くにいた人たちは悲鳴を上げ、その後、教室内は凍り付くように静まりかえりました。

ーお前そんなに女に好かれたいのか?

りょう君の耳元でそうささやくと、血だらけになった手で奈々子のケータイを握りました。全員が悲鳴を上げました。

最後に秀弥君は一番後ろで見向きしない、といった様子で事の成り行きを見ていた祐介君の前に立ちました。

ーお前がバカ女そそのかして、俺への嫌がらせあおってたのなんて、バレバレだっつーの。

そういうと自分の唇を祐介君の唇に押し当てました。教室内の誰もが、私ですら息をのみました。


ー制裁?正義のヒーロー気取ってんじゃねぇよ。おまえ、あの子がプールに行ってたこと、知ってたもんな。ちゃんとそれを報告しておけば、あの子はしなずにすんだかもしれない、なんて、お間違いな罪悪感かかえてんじゃねーの?俺をいじめて、ちょっとは晴れ晴れしたか?知ってる?お前みたいなやつを、ぎぜんしゃって言うんだよ。これ以上調子乗ったことすると、今度は舌いれてやってやるよ。


秀弥君に嫌がらせする子なんて、誰もいなくなりました。