チキ風呂 -15ページ目

チキ風呂

チキ風呂

学校に行きたくない。けれど、そんな理由で休むだなんて、とてもじゃないけど母さんには言えない。言えばきっと、がっかりするはずだ。僕は今の段階でも母さんの期待を裏切っているのだから。母さんの期待。それは人の上に立つこと。母さんの弟、功治おじいさんのように。


そんな僕を母さんは親戚や近所の人たちに「優しい」と自慢する。「優しい」って何だろう。ボランティア活動をしているならともかく、僕は「優しい」と言われるようなことをした覚えがない。ほめるところがないから、仕方なく「優しい」という言葉でごまかしているのだ。それならむしろ、ほめてくれないほうがいい。僕はビリになるのは嫌だけど、一番になれないことを悔しいとは思わないのだから。


物心といた頃から、ひたすらほめられながら育った僕は、自分は頭がいいし、スポーツもできると思っていた。でもそれなりに人数の多い小学校に通っていると、三年生になるころには、それは母さんの願望であって、実際に僕が頑張ったところで中の上くらいにしかなれないことに気付いていた。それでも母さんは、小学生のときたった一枚のとった賞状を居間に飾り、家に訪れる人全員に自慢し続けた。


さすがに中学生になると、その自慢はしなくなったけれど、かわりにやたら「優しい」を連発するようになったのだ。でもそれ以上に嫌だったのは母さんが学校にちょくちょく手紙を書くことだった。気づいたのは一学期の中間テストの後。

担任の森口は総合店の上位3名を発表した。見るからに勉強ができそうな3人だった。僕は拍手をしながらすごいなとは思ったけど、くやしいとは思わなかった。そういうレベルじゃなかったからだ。近所にすむ美月が2位だったから、夕食のときに母さんにそれを教えてあげると、興味なさそうに「あら、そうなの」といっただけだ、なのに、なのにだ!