チキ風呂 -14ページ目

チキ風呂

チキ風呂

数日後、僕は偶然ゴミ箱に、書かれた手紙が捨てられているのを見つけた。

「個々の人格が重視されるようになってきたなか、時代の流れに逆らい、成績上位者を子供たちの前で発表する教師がいることに、不安を感じてなりません」

森口に対するクレームの手紙だと、すぐにわかった。さっそく僕はそれをもって、台所にいる母さんに文句をいった。

「母さん、こんな手紙書かないでよ。勉強できないことを僕が悔やんでいるみたいじゃないか」

すると母さんは優しくこういった。

「直樹、なんてこというの。悔やむだなんて。母さんは順位をつけることが悪いといってるんじゃないのよ。テストの順位だけを発表したことに抗議をしているの。テストの点がいいこだけが特別なの?人間として優れているの?そうじゃないでしょ?でも先生は優しい子に順位をつけてくれる?掃除を頑張った子に順位をつけてくれる?それをみんなの前で発表してくれる?母さんが言いたいのはそういうことなの」


みじめでたまらなかった。もっともらしいことを言っているものの、もし僕が成績上位者として名前を呼ばれていれば、こんな手紙、決して書かなかったはずだ。単に母さんはがっかりしているのだ。それ以来母さんが「優しい」と自慢するたびに、僕はみじめな気分になっていった。

みじめ、みじめ、みじめ、みじめ・・・・・・・・・・・・・・・・・