チキ風呂 -13ページ目

チキ風呂

チキ風呂

チリンチリンと音がして足を止めると、同じクラスの女子が自転車で勢いよく僕を追い越して行った。少し前までは「直君、ばいばい」と声をかけてくれていた子だ。僕はなってもいないケータイをポケットから取り出し、メールを確認するふりをすると、かぜもひいていないのにおおげさに鼻をすすりあげ、再び歩き出した。

そんな僕の背中をいきなり叩いてきたやつがいた。

同じクラスの渡辺秀弥君だ。

「ねぇ、下村君、今日って暇?すっごいビデオが手に入ったんだけど、下村君も見ない?」

ビックリだ。二月の席替えで隣同士になったものの、僕は、彼とあまり話したことがなかった。小学校も別々だったし、係や当番で一緒になったこともない。

それに僕は渡辺君のことが少し苦手でもあった。頭の出来がまるで違うのだ。彼は塾にもいっていないのに、テストはどの教科も満点。夏休みには、化学工作展の大会で入賞もしている。広辞苑も読破したようだ。苦手なところはそれだけじゃない。

渡辺君は普段、一人でいることの方が多い。朝や休憩時間はたいがい難しそうな本を読んでいるし、放課後は部活もせず、すぐに学校からいなくなる。近頃の僕と状況的には似ているのに、決定的に違うのは、それがみじめったらしくないことだ。

友達がいないのではなく、自分の方からみんなをさけている。バカとはつきあってらんない、そんな感じ。そういうところが苦手なのだ。

なのに渡辺君はクラスの男子から一目おかれた存在でもある。変なお世辞をいいながら彼に取り入ろうとする。バカな奴もいるくらいだ。勉強ができるからではない。みんなそんなことには敬意なんてあらわさない。彼はその才能でアダルトビデオのモザイクの部分を九割方取り除くということに成功しているからだ。

とにかくものすごく鮮明に見えるらしい。