チキ風呂 -12ページ目

チキ風呂

チキ風呂

そんな噂を聞くと、僕も見てみたいと思うけど、ろくに口もきいたことないのに、いきなり「アダルトビデオをかしてくれ」なんて・・・いえるわけがない。

それなのに、渡辺君の方から声をかけてきてくれた。いったい、どうなっているんだ?

「なんで、僕なの?」

からかわれているかもしれない。同じクラスの奴がどこかに隠れて、僕がどんな反応するのか、おもしろがって見ているのかもしれない。そう思って周りを注意してみたけど、誰も見ている気配はない。

「前から、下村君と話してみたいと思っていたんだ。でも、なかなかきっかけがなくてさ。ほら、下村君ってなんか余裕あるじゃん。それがなんかうらやましくて」

うらやましい?僕が渡辺君をうらやましいと思うことはあってもその逆なんか、まったく考えられない。

「どうして?」

「僕なんか、みんなからがり勉だって思われているだろ。そういうのって、マックスで頑張ってるって感じで、はずいんだよね」

「そうかな、僕はそんなふうに思わないけど。」

「いや、もう、大失敗だよ。それに比べて下村君は、一学期は余裕かましといての、二学期いきなり成績伸ばしてきたかんじじゃん。」

「そんなたいしたことないよ。渡辺君の足元にもおよばない。」

「でも、まだマックスじゃないよね。かっこいいな。」

かっこいい?僕が?そんなこと生まれて男子にも女子にも言われたことがなかった。なんだかどきどきして、頬が赤くなる。

僕の成績は夏休み塾に行って伸びたものの、実はもうとっくの前からいっぱいいっぱいになっていた。塾の先生にも怒られたし、学校ではペナルティもうけたし、どうせ中の上が限界なんだろうってあきらめて、先月やめたところだ。

でも彼だけが、僕自身も気づかない本質を、見抜いているのかもしれない。

渡辺君と仲良くなりたい。僕は心からそう思った。