セザンヌと過ごした時間 | チャレンジの日々

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少年時代に出会ったセザンヌとゾラの絆は、境遇は違うが芸術家になる夢で結ばれていた。ひと足先にパリに出たゾラは、小説家としてのデビューを果たす。一方、セザンヌもパリで絵を描き始め、アカデミーのサロンに応募するが、落選ばかり。やがてゾラは、ベストセラー作家となって栄光を掴むが、セザンヌは父親からの仕送りも断たれ転落していく。そして、ある画家を主人公にしたゾラの新作小説が友情にひびを入れるが…。

以上、映画情報サイトより引用

画家のセザンヌと、作家のゾラの友情の話です。

少年の頃、貧しさ故いじめられていたゾラを助けた、裕福な銀行家の息子セザンヌ。

二人は、ジャンルは違えど、芸術家としての道を目指し、友情を深めていきます。

私はよく思うのですが、人は、生まれた家で決まる運命というものが大きいのではないかと。

裕福ならば、良い教育も受けられ、良い環境にもいられるので、成功する確率は非常に高くなる。

けれど、「人として」の強さは、貧しい環境に生まれ落ちた者の方が強いのではないかな。

生きていかなければいけないからね。。強くなるのは、当然のような気がします。

あと、もう1つ、天才ほど精神のバランスを崩しやすい(完全に私の個人的な見解)。

この作品は、その両方の面を併せ持っていて、非常に興味深かったです。

青年になるにつれ、ゾラは作家としてデビューし、成功していき、セザンヌの絵は落選続きで、裕福な父親からの仕送りも打ち切られます。

生まれた時の貧富の状態が逆転した状態です。

立場の違いから、関係が微妙になるのですが、ゾラはセザンヌを陰から支え、二人の友情は続きます。

しかし、ゾラが悲劇的な画家を主人公にした小説「制作」を発表したことにより、二人の友情は壊れます。

セザンヌは、主人公のモデルは自分だと思い込み、不本意な書かれように激怒します。

この二人はいつも、言いたいことを言い合う関係だったのですが、この時のセザンヌの歯に衣を着せぬ暴言に、ゾラは、この主人公のモデルは自分なんだ、この情けない偽りの物書きを書いたんだ、と涙します。

そして、セザンヌに「失せろ」と。

じんじんと、胸が痛みました。熱い友情があればこその、この感情のぶつけ合いが、その時の2人の真実がすれ違って決裂していくことが、悲しくて、そして二人ともが可哀そうで。

優しさも大きければ、自己保身の部分も強いゾラに比べ、頑なに自分だけの信念に忠実にしか生きられないセザンヌの方が、やはり天才肌なんじゃないかな。

天才というのは、融通も利かなければ、人付き合いも上手くできない(完全に私の個人的見解)。

ラスト、ゾラが我が町に来たという知らせを聞き、セザンヌは、少し不自由になった足で思わず駆け出します。

ゾラに会いたくて、恋しくて(友情)。

しかし、多くの人に囲まれたゾラは、記者のセザンヌに関する質問に、彼が成功することはないだろう、と答えます。

その言葉を遠巻きに聞き、肩を落としてとぼとぼと帰るセザンヌ。

じーん、と胸が苦しく、痛く、悲しくなるラストでした。

私的評価星星星星