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久々に岐阜に出張。

この地が毎週のように、何泊もする
ヘビロテ出張地ではなくなって早、1年。

今回久々に1泊の出張だったので
当時見つけたシャンパンバーに顔を出そうと
行く前から決めていた。

あの頃、このアウェイの地で
プライベートの心を取り戻すのが困難だった。
でも、
ここでは私の時間を取り戻すことができた。

10席だけの小さなバー。
シンプルでかなり照度を落としたカウンター。
隣が近くても一人になれる間があり、
会話をしても自分を晒し切らなくてすむように
ヴェールをかけてくれる。

まさか岐阜でそんな場所を持てると思わなかったので
私の中では特別な場所だった。

久々に岐阜で夜を過ごすからには顔をだそう。
あの、一人ぼっちにしきらずに適度に距離をもった、でも
愛嬌のあるおしゃべりが印象的な若いマスターの顔を見よう。

扉を開けると、
当時と同じようにシックでリラックスした空気。

ハイスツールにすわって
1杯目のシャンパンを頼んだときに初めて気がついた。




   マスターがかっこよくなっている・・・。




話を聞けば、私の知っているマスターはこの年末で
自分の夢のジュエリーショップを出すために
この店をやめたという。

すこしガッカリ。
でも仕方ない。

これを飲んだら帰ろうか。


新しいマスターが他のお客様との応対の合間に
前のマスターよりもスマートに、
でも「勉強中なんです」という控えめな語調で
今日のグラスシャンパンについて会話をつないでくる。
気がつけば3杯目のグラスシャンパンを口にしていた。

相変わらずここは一人で来ても一人ぼっちにならない。
一人で来た私を一人にしておいてくれる。

この先、私がこの店に来るのは年に1度が精一杯だろう。
でも、この店があり続ける限り顔を出そう。
きっと、この店は待っていてくれている、と思う。

これが空間と人の作り出す「もてなしのDNA」なのかも知れない。



空間の神は『エロス』に宿る

右)デュバル・ルロワ ブリュット
左)パニエ・ブリュット・ロゼ