ネットから「カワセミ」が描かれている掛軸を購入しました。

出品者のコメントには真作でなければ返金するとありました。

 

パソコンの画面上の映像を見て、構図と表面の状態が良かったので購入しました。

 

私は、汚れや経年劣化も鑑賞の対象にしています。

どうしても、きれいな状態でなければダメというわけではありません。

しかし、たまには表面がきれいな掛軸もいいかなと思って購入したのですが、現物には何か違和感があるのです。

 

本紙の背景があまりに均一に全面に塗られているのです。

 

作品は絹ではなく、化学繊維の布、いわゆる新絹本を使用しているように見えます。

新絹本なので、ひょっとしたら染めたものに描いたのかもしれないと思いました。

でも、柳の葉の描き方を見てもムラがなく均一に見えるのです。

全ての葉に筆の塗りムラがありません。

それは、絵師の技術が高度だからですといわれればそれまでですが、印刷された画面のような気がするのです。

 

カラー印刷であれば、三原色(赤、黄、青)と黒色の小さな点を沢山打っています。

極めて小さな点なので、肉眼ではその点は見えません。

1.6倍の拡大鏡で見ましたが、まったくわかりません。

 

ならばと、ネットで掛軸の肉筆と印刷の見分け方を検索しました。

「掛け軸の肉筆・印刷の見分け方」

https://www.kakeziku.net/fs/kakeziku/c/page-print-identify/

「肉筆の掛け軸と印刷の掛け軸を見分けるための大きな違いは、「作者の癖」が見られるかどうかです。しかし、昨今の加工技術は高いため、完璧な判別をするには高度な知識と経験が必要とされます。まず、判別する際によく見られる箇所として、文字の「止め」「はらい」「曲げ」の部分が挙げられます。この方法では、同じ作者の作品を何作か比較した上で文字の個性や特徴を掴む必要があるため、すぐに判断することはできません。また、インクや墨などの絵具から判別するという方法もあります。実際に触れて質感や匂いで肉筆か印刷かを判断するのです。パソコンのインクなど身近にあるものが使われている場合、印刷だとすぐにわかることもあるようです。いずれも写真や画面上で判別することは困難であり、専門家でも実際に手に取ることが不可欠とされています。他にも「滲み」や「色合い」なども判断する材料となることがありますが、素人が判断することは難しいでしょう。

 

「判別する際によく見られる箇所として、文字の「止め」「はらい」「曲げ」の部分が挙げられます。」とありますので、落款を見ましたが、筆の勢や強弱が感じられますので、署名は実際に書かれたもののように見えます。

 

「・・・写真や画面上で判別することは困難であり、専門家でも実際に手に取ることが不可欠とされています。他にも「滲み」や「色合い」なども判断する材料となることがありますが、素人が判断することは難しいでしょう。」

 

私は、素人ですので、判別は難しいということになりそうです。

 

でも、何か方法があるはずです。

 

三原色(赤、黄、青)と黒色のドットは見えなくても、白色は白い地を利用しているハズです。

通常の印刷は色を重ねるほど黒に近づきますので、白は印刷できないのです。

そうすると、均一に塗られた背景地の全部が染めたものなら、白は出せないことになります。

 

でも、手元にある掛軸には白い部分があります。

布目も見えます。

 

ということは、均一な背景地は染めたものではないということになります。

でも、他の白地はどうなのでしょうか?

盛り上がっているように見えます。

 

白に注視して見た場合、この掛軸は印刷された後で、極一部分に手彩色で白を置いたようです。

 

問題は、印刷された掛軸は「真作」ではないと断定してよいのでしょうか?

 

例えば、パソコンで、絵柄を作成し1部印刷して販売したとします。

追加注文があれば、その段階でまた印刷すればいいのです。

オフセット印刷であれば、一度に大量に印刷しますが、デジタル印刷であれば、1部からでも印刷します。

もし、海外から注文が来たら、データを海外の印刷会社に送って印刷すれば、時間と配送費の節約になります。

 

出品者は「肉筆」とは言っていません。

その印刷した掛軸を「真作」と言って販売しても、嘘をついたことにはならないと思います。

 

しかし、同時に50部印刷したらどうでしょう。

50部限定と注釈をつければ、印刷したことも分かります。

この注釈をつけないで「真作」と言ったら、私はかなり不誠実だと思います。

 

しかし、絵柄を少し変えながら50部印刷した場合はどうでしょう。

あるいは、部分的に手彩色した場合はどうでしょう。

 

同じものは一つもないわけですので、すべてオリジナルになります。

 

印刷というと、大量印刷をイメージしがちですが、1部印刷の作品もアリだと思います。

 

今後、デジタル印刷の技術はますます発展します。

肉筆と全く見分けのつかない作品が作成されたとき、「真作」の鑑定は素人でなくても、不可能になると思います。

肉筆かどうかの判定は科学鑑定にゆだねるしかなくなると思います。

 

その他にも、この掛軸には、本紙が出来あいの表装の上に貼り付けされているなど、手抜きされている部分がありますが、それも「真作」ではないと断定できるものではありません。

 

私自身はこの作品が印刷されたものであったとしても、気に入って手元において鑑賞しています。

 

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