ウクレレの音色とみんなの祈り
津波から週末を経て、ハワイの薬草学のクラスに出た。
ケオキという若い先生は、クラスのはじめにまずみんなで
日本のためにお祈りを捧げ、
寄付の全額が日本の被災者に届く団体の情報を
ボートに書いてくれた。
それから「日本の友達にシェアしてね。」と
放射能を体から排出する機能のある薬草を
教えてくれた。
それは、Limu(海藻)とOhe (竹)の葉っぱ。
ヨウ素を多く含んでいる昆布や海藻を取るといいというのは、
日本でもすでにおなじみのようで、
私のともだちからも、
「わかめのみそ汁、毎日飲んでるよ~!」というメールが届いた。
”竹の葉っぱ”に関しては、へえ~!という感じなのだが、
そういえばクマ笹茶とか、日本にもあるよね。
オハイ先生とケオキがシェアしてくれたやり方は、
竹の葉っぱはきれいに洗ったあと、そのまま沸騰したお湯に入れて、
3分間かきまぜ、自然に冷めるのを待ってから飲む。
一日、何回飲んでもよいそうだ。
災害のニュース映像を見ると、ものすごく胸が痛いけれど、
一方で、この危機を乗り越えるため体を張って働いている
プロフェッショナルの方々のがんばりには
本当に頭が下がる。
テレビでは、どうしても危機のほうを伝えることに
終始しがちなのだけれど、
ツイッターや、facebook、ブログなどのおかげで、
この過酷な状況のなか、淡々とすばらしい仕事をされている方々の様子や、
ひとりひとりが自分たちにできることをしよう、と
コーヒーを差し入れしたり、お互いを思いやる言葉をかけあったり、
役に立つ情報をシェアしあったりと、
あったかい話がたくさん伝わってきて、
毎日、じ~んと胸を熱くしている。
私はもともとネットのチェックはまめなほうではないのだけれど、
今は毎日、日本の家族や友達のことが気になって、
一日何度も、ニュースやツイッターなどをチェックしてしまう。
そこで驚いたのが、
人の心って、新しい情報が入ってくるたびに
毎秒毎秒、これほど変わるものなのかということ。
誰かの発した言葉を受けるたびに、
心がどーんと重くなったり、ぱあっと明るくなったりして、
それはそのあとの自分のムード、体の調子を変え、
さらには自分の行動までも変えてしまうくらいだ。
たとえば、どーんと暗いニュースを見たあとに授業に行くと、
もうクラスメイトと目を会わせるのもつらいくらいに
自分が落ち込んでいるのがわかる。
ツイッターで明るいコメントや情報を見たあとだと、
その授業の間中、とても安心した気持ちで目の前のことに集中できる。
言葉の使い方ひとつ、
そして言葉を発する人の態度で、
(ポジティブなのかネガティブなのかなど)
こんなにも受け取った人の心や行動までも
変えてしまう、
言葉はそんなすごい力を持っているんだなと
あらためて身を持って感じた。
だから、自分が毎日話している言葉、
この言葉には必ず受け手が存在するのだから、
今まで以上に、気をつけようと思った。
また情報の受け手としては、
バランスを大事にしようと思った。
こんな災害のときだから、
TVを完全にシャットダウンすることは難しい。
でも、なにか心がへこむような情報が胸に入ってきたときは、
緊急のときは、すぐに避難の行動に移るべきだけれど、
すこしゆとりのあるときは、
大好きな音楽を聞くとか、
きれいな絵や写真を見るとか、
ツイッターやブログでみんながシェアしてくれている
いい話を読んでみるとか、
美しい詩を読むとか、
目を閉じて、自分の呼吸の音だけに集中して
ゆっくり大きく深呼吸してみるとか...、
傷ついた自分の心に、軟膏をぬってあげるようなことを
なんでもいいから、こまめにやったほうがいいと思う。
ここ数日間、いつも私を癒してくれたのは、
意外にも、ウクレレの音色だった。
意外にも、というのは、
私がウクレレの全くの初心者でへたくそなものだから、
きれいに音を出すのも難しく、
練習も時間ばかりかかってしまい、
ウクレレを弾くのが気持ちいいと思ったことは
今までほとんどなかったからだ。
日本の友達の笑顔が見たくても見れなくて、
悲しくて、ぐたぐたに落ち込んで、体も重くて、
そんなときでも、ウクレレのクラスでポロロ~ンとウクレレを鳴らし、
その音色を聞くと、心の中にあった固まりが
じわ~っと溶けてゆくのがわかった。
ウクレレを弾いていると、
体までどんどん軽くなって、あったかくなってきて、
短い曲を一曲弾き終わるころには、
もうすっかり笑顔になっていた。
世界は、この明るい音色とやさしいメロディーのなかにある、
少なくとも、私がこの音を聞いているあいだは。
ず~っと胸が痛んでいるこの時期に、
きらきら光る木漏れ日みたいに、
やさしいさざ波のように、
心を満たしてくれた、ウクレレの音色を
私は一生、忘れない。
日本のみんなに祈りを捧げてくれている
ハワイの先生、友達、世界中のたくさんの人たちのあたたかい心とともに。